挽いたコーヒー豆から微粉を取り除くとコーヒーは美味しくなる?

  •  
  •  
  •  コーヒーの抽出
  •  コーヒーと微粉

ずっと前から聞き及んでいたものの、試していなかった、微粉の有無によるコーヒーの味の違いについて検証してみたいと思います。

はじめに

念のために解説しておくと、微粉とは、読んで字のごとくコーヒー豆を挽いたときに出てくる細かいコーヒー粉をさします。例えば中粗挽きでコーヒー豆を挽くとき、殆どは希望通りの中荒挽きになりますが、中には中粗挽きよりも細かすぎるコーヒー粉が含まれます。この細かいコーヒー粉の事を微粉と呼びます。

コーヒー豆を挽いてコーヒーを飲んでいる人であれば、ある程度の人は微粉の有無によってコーヒーの味が変わるというのは聞いたことがあるかと思います。ただ、微粉を取り除くためには挽いたコーヒー豆を茶漉しでふるいにかけるなど、結構面倒な作業をする必要があり、日常的にコーヒーを飲んでいる人であれば、毎日それを行うのは億劫ですし、実際に微粉を取り除いてみたことがある人も多くはないでしょう。たぶん。

私もその口でずっと試したことがなかったのですが、最近、コーヒーの微粉の除去をするためのコーヒー器具を見つけて購入してみたので、これを機に微粉を除去したコーヒーを試してみることにしました。

コーヒーを淹れる条件

今回淹れたコーヒーは、以下の条件のもと抽出しています。

  • 使用したコーヒー豆:エチオピア モカ グジG1 ナチュラル
  • 焙煎度:フルシティローストぐらい
  • コーヒー豆の粗さ(ナイスカットミルのメモリ):4
  • ドリッパー:ハリオ V60透過ドリッパー01(ガラス)
  • コーヒーポット:ユキワ M-5
  • フィルター:ハリオ V60ペーパーフィルター01W(ホワイト)
  • 秤:ハリオ ドリップスケール
  • 豆の使用量:16.7g
  • お湯の温度:約87℃
  • 蒸らし時間:20秒
  • 抽出量:120ml

サザコーヒー”パウダーコントロールストッカー”について

今回見つけてきたのは、サザコーヒーが販売する”パウダーコントロールストッカー”です。サザコーヒーは茨城県に本社を置くコーヒー豆などを販売する会社で、コロンビアに自社の農園を持つなど、日本国内のコーヒー豆を取り扱う会社でも規模の大きい会社です。

サザコーヒーの販売するパウダーコントロールストッカーはコーヒーの微粉を取り除くための道具で、緑茶などの茶葉が入っているような、薄いステンレス製の筒と3種類の”ふるい”がセットになっています。

パウダーコントロールストッカー

パウダーコントロールストッカーの外観。これだけ見ると大きな昆布茶みたいです。

分解したパウダーコントロールストッカー

右の3種類のふるいを左の赤い筒にセットして、コーヒー粉を入れて蓋をして使用します。ふるいはそれぞれ網目の粗さが異なり、粗いものが”フルーティメッシュ”、中間のものが”バランスメッシュ”、最も細かいものが”アロマメッシュ”です。

見た目の通り、パウダーコントロールストッカーはコーヒー粉をふるいに通すことで網目よりも小さい微粉を取り除くものです。つまりは茶漉しにかけるのとは変わらないローテクな道具ですが、ふるいが3種類用意されていることや、蓋がついている点など、通常の茶漉しよりもコーヒー粉をふるうために特化しているため、この製品を選んでみました。

コーヒー粉をふるいにかけて、微粉を取り除いてみる

パウダーコントロールストッカーを洗ったら、早速コーヒー粉をふるいにかけてみます。パウダーコントロールストッカーの説明書には、中挽きのコーヒー豆を使用するように書かれていたので、いつもどおりのナイスカットミルの4メモリ、中粗挽き程度の粗さでコーヒー豆を挽き、ふるいに入れます。

コーヒー粉を入れたパウダーコントロールストッカー

一番網目の粗いフルーティメッシュをセットして、そこにコーヒー粉を入れたところ。ここから蓋をして、30秒間上下に振って微粉を取り除いていきます。

シャカシャカと、早すぎず遅すぎず、適当な速度で30秒間上下にシェイク、シェイク!蓋を開け、ふるいを外して、微粉とふるいに残ったコーヒー粉をそれぞれ分けて取り出します。

コーヒー豆の微粉

ふるいにかけられた微粉。20gのコーヒー豆挽いて、微粉として取り除かれたのは3.3gほどでした。結構多い。

微粉を取り除いたコーヒー粉

そしてふるいに残ったコーヒー粉。粒の大きさがキレイに整っているのが分かります。微粉が取り除かれて、20gのコーヒー豆は重さ16.7gになっていました。

3種類の微粉を取り除いたコーヒー粉

挽いて、ふるって、を繰り返して、3種類それぞれのふるいでふるったコーヒー粉が出来上がりました。それぞれ残ったコーヒー粉の重さを量ってみたところ、

  • フルーティメッシュ(粗):16.7g
  • バランスメッシュ(中):17.2g
  • アロマメッシュ(細):17.7g

といった具合で、当然ですがふるいの目が粗いほど微粉として取り除かれたコーヒー粉の量は多くなりました。理論的には目が粗いほどよりコーヒー豆の粒の大きさが整っているので、コーヒーを抽出した場合にはフルーティメッシュでふるったコーヒー粉で淹れたコーヒーが一番美味しくなるはずですが、果たしてどうなるのでしょうか。

微粉を取り除いたコーヒー粉で淹れたコーヒーを飲む

それぞれ微粉を取り除いたコーヒー粉が準備できたら、すぐにコーヒーを淹れていきます。今回は微粉を取り除いた3パターンのコーヒーと、微粉を取り除かないコーヒー、計4杯のコーヒーを飲み比べます。また、コーヒー粉の使用量は、一番重量の軽いフルーティメッシュで微粉を取り除いたコーヒーに合わせて、全て16.7gとしました。

それぞれのコーヒーを淹れる過程で気づいたのが、微粉を取り除いたものと取り除いてないコーヒーでは、お湯の抜けとアクの出具合が全く異なることです。微粉を取り除いたものは、お湯がすぐ抜けていき、コーヒー粉が膨らむ中でもアクがあまり出てきませんでしたが、微粉を取り除いていないものはお湯の抜けが微粉を取り除いたものよりも悪く、アクも多く出てきました。

抽出の段階で早くも微粉の有無の違いを感じながらも、なるべく素早く4杯のコーヒーを淹れて飲み比べます。まずは、微粉を取り除いていない普通のコーヒー。飲むと、程よい苦味があり、甘みとモカ特有のフルーティな香りを感じます。微粉の有無にかかわらず、元々スペシャルティコーヒーであるため、これでも十分に美味しいコーヒーです。

次に、アロマメッシュでふるったコーヒー粉で淹れたコーヒーを飲みます。口に含むと、微粉を取り除いていないコーヒーよりも尖った感じが少なく、口当たりが優しく感じます。苦味も丸くなり、鼻の奥に感じるモカの華やかな香りがより強く感じられる気がしました。一番微粉をふるった量の少ないアロマメッシュでも、だいぶ印象が違うものになりました。

続いて、バランスメッシュでふるったコーヒーを飲みます。こちらは、アロマメッシュでふるったものよりも更に口に含んだときの甘みと香りが増して感じられます。そして、苦味はより少なく感じました。この時点で明らかに微粉を取り除いていないコーヒーよりも美味しくなっているのが分かりました。

最後に、最も網目の粗いフルーティメッシュでふるったコーヒー。口に含むと、バランスメッシュのものよりも更に口当たりが優しくなり、とてもスッキリとした飲み口で、程よい酸味とより強く感じられるフルーティな香りで、もうすでに別物のコーヒーのように感じます。苦味は更に減ったように感じ、コーヒー豆の個性がより強く押し出されたコーヒーとなりました。

それぞれ4杯のコーヒーを交互に何度も飲んでみると、ビックリするくらい印象が違って、フルーティメッシュで微粉を取り除いたコーヒーと、微粉を取り除いていないコーヒーを飲み比べてしまうと、スペシャルティコーヒーであっても微粉を取り除いていないほうは不味く感じてしまうくらい、コーヒーの味が変わりました。本当にビックリしました。

今回の結果

今回の結果をまとめると、以下のようになります。

  • 微粉を取り除くと、明らかにコーヒーは美味しくなる
  • コーヒー粉の粒の大きさが整っているほど、淹れたコーヒーは美味しくなる可能性がある

考察・感想

本当にビックリしました(2回目)。微粉を舐めていました。微粉の有無でここまでコーヒーの味が変わってしまうと、今後ずっと微粉を取り除き続ける必要があるかもしれません。

4種類のコーヒーを飲み比べてみて、より目の粗いふるいでふるったコーヒーが一番美味しく感じられたのは、コーヒー粉の粒の大きさが一番整っていたのが理由でしょう。ここから考えられるのは、微粉を多く含んだコーヒーが微粉が少ないコーヒーよりも美味しくないのは、微粉の量が理由ではなく、厳密に言うと抽出されるコーヒーの成分にムラが出るから、という事です

微粉を一切取り除いていないコーヒー粉は、粒の大きさがバラバラです。この場合、大・中・小・極小の4つくらいの粒の大きさに分類されるとします。これにお湯をかけると、コーヒーの成分が滲み出てきますが、粒の大きさはバラバラであるため、抽出される成分もばらつきがあります。粒の大きいものは苦味よりも酸味が、粒の小さいものは酸味より苦味が強くでます(確かそうだったはず)。それ以外の成分の抽出具合もバラバラでしょう。すると抽出されたコーヒーはバラバラの抽出具合のコーヒーの混合物となり、まとまりがない味わいとなります。

対して、微粉を取り除いたコーヒー粉はある程度小さい粒は取り除かれるため、粒の大きさが大・中・小の3つになるとしましょう。目が荒い場合、例えばパウダーコントロールストッカーのフルーティメッシュでふるったものは大・中くらいまで整うかもしれません。そのコーヒー粉にお湯を注いだら、粒の大きさはある程度整っているため、抽出される成分の具合もある程度統一されるはずです。つまり、微粉を取り除いていない、粒の揃っていないコーヒーに比べると、まとまりの良いコーヒーが出来上がるわけです。

上記はあくまで想像ですが、コーヒー豆を挽いて美味しくない部分だけが何故か微粉となってでてくる、ということはありえないと思うので、微粉を取り除くとコーヒーが美味しくなるというのは、あくまでコーヒー粉の粒の大きさが均一であるほうが抽出されたコーヒーは美味しくなるというのは、間違っていないかと思います。

ただ、コーヒー粉の粒の大きさが整っている方が一番美味しく感じられましたが、よく悪くも味が丸く落ち着くので、ちょっと目覚ましに刺激的なコーヒーでも良いな、というときは、あえて微粉を取り除かないコーヒーをでも良いかもしれません。気分によって求めるコーヒーの味わいはそれぞれかと思いますし、微粉をより多く取り除いてコーヒー粉の粒の大きさをなるべく整えることが絶対である、ということはないと思います。気になる人は一度試してみて、自分にあった味わいのコーヒーを探ってみると面白いかと思います。

さいごに

想像以上に面白い結果になって、非常に有意義だったと思います。今後は他のコーヒー豆でも試してみて、微粉の取り除き具合によるその味わいの違いを感じて、より一層コーヒーを楽しみたいと思います。

自宅に茶漉しなどがあれば、是非一度試してみていただきたいと思います。きっとビックリしますよ。

今回使用したもの

サザコーヒー パウダーコントロールストッカー メッシュ3種付

コメントを残す


CAPTCHA