淹れたてコーヒーを水筒に入れて保存すると、味の劣化が早くなる?
- 保存方法
- コーヒーの保温
一説によると、淹れたコーヒーを保存するとき、高温であるほど酸化が早く進むそうです。果たして本当でしょうか。
はじめに
コーヒーを高温で保存する場合とは、保温できる水筒などに入れて持ち運ぶ時と言って良いでしょう。私は仕事に行く時、淹れたてのコーヒーを真空二重構造の魔法瓶の水筒に詰めて持っていくのですが、職場まで10分もかからないうえ、ついたらすぐに飲んでしまうので、コーヒーを高温で保存していても劣化したコーヒーを味わったことはありません。
以前にコーヒー豆の保存方法についての検証を行った際、コーヒー豆の状態での酸化の影響によるコーヒーの味わいの劣化について実感することはできましたが、淹れた後のコーヒーの保存方法によって品質が変化するかというのはこれまで頭になかったため、今回ちょっと確かめてみたいと思います。
コーヒーを淹れる条件
今回淹れたコーヒーは、以下の条件のもと抽出しています。
- 使用したコーヒー豆:ブラジル タデウ パルプドナチュラル
- 焙煎度:フルシティローストぐらい
- コーヒー豆の粗さ(ナイスカットミルのメモリ):4
- ドリッパー:ハリオ V60透過ドリッパー01(ガラス)
- コーヒーポット:ユキワ M-5
- フィルター:ハリオ V60ペーパーフィルター01W(ホワイト)
- 秤:ハリオ ドリップスケール
- 豆の使用量:20g
- お湯の温度:約87℃
- 蒸らし時間:20秒
- 抽出量:130ml
- 保温時間:3時間10分
- 飲み比べ時のコーヒーの温度:50.7℃
魔法瓶にコーヒーを淹れて保温しておく
今回の検証の手順としては、まずコーヒーを1杯淹れて、すぐ魔法瓶の水筒に淹れてフタをしておきます。そのまま数時間おいた後、またコーヒーをもう1杯淹れ、水筒に保存しておいたコーヒーの温度を計測し、淹れたてのコーヒーの温度が水筒で保存していたコーヒーの温度と同じになるまで冷ましたら、飲み比べを行います。
今回は淹れたてのコーヒーを水筒で3時間ほど保温した後、淹れたてのコーヒーと飲み比べを行うことにします。ちなみに3時間という時間は適当です。
今回使用するのは、おなじみタイガーの魔法瓶の水筒で「夢重力」というシリーズのものです。文字通り重量が軽く、フタを捻って開けて、水筒に直に口をつけて飲むタイプで、パーツがフタ、パッキン、本体のみの3つで、飲み終わった後の洗い物が比較的簡単なのでオススメです。
タイガー 水筒 350ml 直飲み ステンレス ミニ ボトル サハラ マグ 軽量 夢重力 ブラウン MMZ-A035-TV Tiger |
高温の状態で保温したコーヒーと淹れたてのコーヒーを同じ温度で飲み比べる
コーヒーを魔法瓶の水筒で保温して3時間経過したら、もう1杯コーヒーを淹れます。コーヒーを淹れ終わる頃には10分ほど経過していたので、3時間10分経ったコーヒーと淹れたてのコーヒーの飲み比べ、ということになるでしょうか。
コーヒーを淹れたら、水筒のコーヒーの温度を測ります。この時点で、温度は51.2℃となっており、その後淹れたてのコーヒーの温度を測ると54℃ほど。3時間経ってもほとんど温度は下がっておらず、魔法瓶の保温効果は間違いないことが分かります。ここから淹れたてのコーヒーを少し冷まして、両方の温度が50.7℃になったところで飲み比べます。飲み比べ温度が51.2℃じゃないのは、水筒の温度がフタを開けっ放しにしていてちょっと下がったからです。
2杯のコーヒーが出揃ったら、まず淹れたてのコーヒーを飲みます。口をつけると、ちょっとぬるめに感じる温度。味は苦味が強く、しかしマイルドで甘みもあります。果実系の香りで、酸味は少なく、土っぽいというか、独特な苦味です。ほんのりあと引く、ただ苦いだけじゃない、個性を持ったブラジルのコーヒーです。
そして本題の、魔法瓶の水筒に入れて高温で保存していたコーヒーを飲みます。口に含むと、苦い、と同時に先程は感じられなかった酸味が強く感じられます。甘みはなくなり、果実のような香りもない。苦味は変わらず強く感じますが、それ以外の良い要素は消え、妙な酸味だけが付与されました。全く別物のコーヒーです。
今回の結果
今回の結果をまとめると、以下のようになります。
- コーヒーを高温で保存すると、酸化してコーヒーの本来の味が楽しめなくなる
考察・感想
いやー、やってよかったです。コーヒーを語るとき、コーヒーの酸化ってのをよく言葉にしますけど、今回ほど酸化っていうのを身をもって実感したのは初めてです。本当に酸化って言葉がピッタリの状態変化でした。
コーヒーを高温で保存すると、同じ温度の淹れたてのコーヒーよりも品質が明らかに劣化しているのは、コーヒー豆の保存のとき同様、温度が高いほど酸化が進むのが早くなることによる影響が考えられるかと思います。そして、この結果から言えるのは、コーヒーの温度を高い状態で保てても、コーヒー本来の味わいを保つことはできないという事です。つまり、真空二重構造の魔法瓶で温かいコーヒーを長時間保存することはNGということですね。
抜け道があるとすれば、冷ましてからコーヒーを水筒に入れることです。温度が10℃上昇すると反応速度は2倍になるという法則がありますが、これを当てはめて考えると、温度が高いことによって酸化速度が早まっているのであれば、低い温度で保存すれば酸化速度は低下するということになるので、コーヒーを冷まして保存すれば、品質を劣化させることなく保存することが出来るかもしれません。
ただ、そこで問題になるのが、単純にコーヒーがぬるくなってしまうということです。温かいままのコーヒーを飲むために魔法瓶の水筒にコーヒーを入れて持ち運ぶのに、冷ましてぬるくしていたら本末転倒です。内容的には検証してみる価値はありそうですが、冷まして保存するのは実用的ではないかと思います。
ただ、実用的という観点でいうと、今回の保存時間である3時間は、ちょっと長かったかと思います。家を出る前にコーヒーを淹れて、職場などの外出先に行って、飲み始めるまで3時間かかるでしょうか。お昼に飲むつもりの人ならむしろそれ以上かかると思いますが、かなり少数派かと思います。この保存時間が、例えば2時間としたとき、コーヒーの味があまり劣化しないという可能性もあります。実用可能な範囲を突き詰めるのであれば、コーヒーの温度を下げるより、コーヒーを美味しく飲むことが出来る限界の保温時間を探るほうが良いかもしれません。
また、以前行ったコーヒーの時間経過による味の変化についての検証で、「コーヒーの味わいに時間経過は影響を与えない可能性がある」と結果に書いていました。ですが、今回の件を考慮すると、「コーヒーの味わいに時間経過は影響を与える」というのが正解でしょう。ただ、この前回の検証でコーヒーの味わいの差を感じられなかったのもまた本当だったとすると、自然にコーヒーの温度が下がる分には、時間経過はコーヒーの味わいには影響を与えないのかもしれません。
最後にちょっと思うのが、今回の味の変化は本当に高温で保存していたせいなのか、というところです。というのも、ステンレスの魔法瓶に入れていたせいではないか?、という点が切り分けができておらず、ステンレスという材質の影響によって味の変化がもたらされているのかも、という点について否定出来る要素が無いためです。ただ、現状ステンレスの真空二重構造の魔法瓶以外にコーヒーを高温で保存出来る道具はないと思うので、その点を踏まえるとやっぱり高温でコーヒーを保存しないほうが良い、という結論になりますかね。
さいごに
味わいの差が実感できる検証になって良かったです。コーヒーが好きな方には、是非一度同様の検証をやってみる事をおすすめします。そして、淹れたてのコーヒーを魔法瓶の水筒に入れて長時間持ち運んでいる人は、コーヒーを持ち運ぶのは諦めて、外出先で淹れたてを飲むか、お店で買うかするようにしましょう。
私も金属のせいではないかと思います!
私も同じ水筒を使っています。
普段はこのように水筒に入れています。
コーヒー: 18g
お湯: 320g
淹れたら、抽出器の蓋を開けたままにして、7分後に水筒に入れる。
さっき、7分後のコーヒーをコーヒーカップに少し入れて、残りを水筒に入れました。そして、コーヒーカップに入っていたコーヒーでは物足りなかったので、水筒のコーヒーをカップに入れて飲みました。水筒に入れて数分も経っていないのに、酸味が非常に強くなっていました。
コメントありがとうございます!
新品のガラスの水筒を使用して同様の検証を行ってみた記事もあるので良かったら目を通してみて欲しいのですが、こちらの場合でも同様に酸味が強くなるように感じられました・・・。
https://coffee-no-are.com/storage-method/coffee-heat-retention-3/
ですので、現時点では材質に関わらず、温度による影響が強いものかと考えています。ただ、ステンレスよりもガラスの水筒のほうがマシに感じたので、材質と温度、両方に原因があるかもしれませんね。
非常に興味深い検証で感激しました。私も昔から、ステンレスボトルにホットコーヒーを入れると30分もしないうちにまずくなると気づいていました。今回の記事で私の舌は正しかったと立証され、うれしく思います。私は家ではいつもガラスのコップに入れておいしく飲んでいますが、たまに、ステンレス製の保温カップに入れて自分の部屋に持って行って飲みます。そうすると、10ふんもしないうちに、まずくなります。やはり、ステンレス製がだめなのかと思っています。今度、2重底になったガラス製の保温カップを買って、試してみたいと思っています。
コメントありがとうございます!
温度、淹れ方、コーヒー豆の品質などなど、コーヒーを美味しく飲むために必要な要素はいくつもありますが、何気ない、コーヒーを飲むために使うカップの材質というところも実は重要なのかもしれませんね。
ガラスの保温カップとの飲み比べも面白いと思います!ぜひ確かめてみてください。