水から煮出すスタイルで、美味しいコーヒーは抽出できるか
- コーヒーの抽出
- コーヒーの抽出方法
コーヒーの抽出方法について考える
コーヒーのドリップにも色々あります。もっともシンプルなのは、お湯をコーヒー粉に注いで(通して)抽出する透過式。お湯を使う場合はその他、お湯にコーヒー粉を一定時間漬け込んでから分離する浸漬式もあります。水を使う場合もお湯のときと同じですが、より時間をかけて抽出します。その他、空気圧で押し出すエアロプレスなどもあります。
日本でコーヒーを飲む場合のドリップ方法を思いつくところだとこんな感じですが、なんだか物足りません。固定観念に捕らわれているだけとか、そもそもの知識量不足なのかもしれませんが、もう少し、何かこの他にないかなーと思うわけです。以前牛乳で直接カフェオレをドリップしたりしてみましたが、こういった奇をてらったタイプではなく、もう少し王道寄りなドリップ方法はないものかと。
コーヒーの性質上、水またはお湯で成分を引っこ抜いて水に溶かしてあげる必要があるので、水(液体)は必須としましょう。そうなると、お湯か水どっちを使うか・・・と考えるわけですが、それだと冒頭に書いたドリップ方法と変わりがありません。では、水とお湯を両方使ってみるのはどうでしょう。つまり、水にコーヒー粉を入れて火にかけて、沸騰する過程でコーヒーを抽出するのです。煮出し方式ですね。
という具合に、煮出し方式のコーヒーのドリップを思いついたので、今回それを試してみたいと思います。
グツグツと、コーヒーを煮出す
コーヒーを煮出すに当たって準備するのは煮出すための小鍋、コーヒー粉、分離用のペーパーフィルターとドリッパー。コーヒーポットとサーバーがいらないので、気持ち程度ですが準備物がコンパクトになります。まあ、小鍋が追加になってますけどね。
煮出しコーヒーに使う道具。小鍋はコーヒー専用です。贅沢を言うなら、もっと小さいのがあれば良かったのですが。
小鍋にコーヒー粉を入れます。コーヒー豆は、浅煎りのモカイルガチェフェのG1を15g、中挽きくらいに挽いて使用します。浅煎りのモカを使うのは、通常のペーパードリップと味の濃度の差がわかりやすそうだからです。水の量は150mlとします。
水とコーヒー粉を入れた小鍋。出来の悪いスパイスカレーみたいです。
あとは小鍋をコンロで火にかけるだけ。火加減は弱めの中火ぐらいで、一気に加熱しすぎないように注意して温めていきます。スプーンでかき混ぜながら加熱して、沸騰したら数秒ほどそのままにして、火を止めて30秒くらい落ち着かせ、分離用のドリッパー(今回ハリオのV60)を通して、コーヒー液だけをカップに注いだら抽出完了です。小鍋での加熱時間は5分ほどでした。
煮出しコーヒー。同じ豆をハンドドリップしたときと比べて、色は濃く見えます。
早速一口。まず、ハンドドリップと違って抽出中のお湯の温度低下がないため、熱いかなーと思ったのですが、浅煎りのためペーパーフィルターでの濾過に時間がかかったので、適温です。味は、予想通りハンドドリップするよりも苦味が濃く感じられますが、同時に妙に酸っぱい感じになってしまいました。香りはモカ特有の華やかのものがありますが、ハンドドリップしたコーヒーと比較すると、口腔内での広がりがイマイチです。
煮出した場合、ハンドドリップと比較して味の印象は濃くなっていますが、代わりに全体的に雑さが目立つ形です。ハンドドリップが彫刻刀を用いた木工なら、煮出した場合はチェーンソーを用いた木工、といったところでしょうか。性質的に違います。ちなみに木工には全く詳しくありません。
感想・考察
味に繊細さが無くなるのは概ね予想通りでしたが、まだ初めて試した段階なので、改良の余地はあると考えています。例えば、今回はあえて沸騰させましたが、お湯の温度が高いと雑味が出やすいというのはコーヒーのドリップにおいてよく言われるので、沸騰させる前に火から下ろすようにするとか。コーヒー豆の粗さも、ハンドドリップの水準に合わせて中挽きにしましたが、色々試して適切な粗さも見極めなければなりません。お湯の温度を低いところで抽出するなら細挽きで、お湯を沸騰させるなら粗挽きにしてみる、とか。コーヒー豆の向き不向きもあるでしょうし、隙を見ていろいろ試してみたいと思います。
というか、この手の検証はもしかすると昔やったかもしれません。まあ、忘れてるんだったら実行していないのと変わりないので問題ないのですが。価値観も今と昔じゃ違いますしね。あと、細部は違うかもしれませんが、今回のようにコーヒーを煮出して飲むのがスタンダードな国があったような気がします。せっかく思いついたのに調べてしまうとやる気が削がれるのであえてそこは調べていませんが、あったはずです。ベトナムとかそっちの方だった気がします。
また、日頃常々思っていることではあるのですが、浅煎りのコーヒー豆のお湯の抜けの悪さはどうにかならないものでしょうか。今回もV60で濾過する際、コーヒーがほとんど落ちきるまで2〜3分ほどかかっている気がします。これについても焙煎度の異なる同じコーヒー豆を用意して、今度色々試してみたいと思います。
最後になりますが、今回コーヒーを煮出してみたところの本質は、前提を疑う、ということにフォーカスしたかったからです。最近、コーヒーについて書くことが無くなってきたなあと思っていたので、更に観点を変えてみました。考え方を変えたら、まだ少しだけですが新しいアイデアが浮かんできたので、今後もちょくちょく面白おかしいことをやっていければなと思います。