コーヒー豆を大量に使って、とびきり濃い少量のコーヒーをドリップする
- コーヒーの抽出
- コーヒーの濃度
とびきり濃いコーヒーの話
いつものようにただなんとなくコーヒーをドリップしていたら、ふと昔聞いた話を思い出しました。以前住んでいた場所の近所のカフェのオーナーが言っていた話で、大阪に1杯10万のうんと濃くて高いコーヒーを出す店があるという話です。思い出しついでに調べてみたら、たしかにそういったお店がありました。
そのお店は”ザ・ミュンヒ”というお店で、1杯10万円のコーヒーというのは、ざっくり言うと大量のコーヒー豆で少量のコーヒー(1.5kgで100〜200mlという話も)を超ゆっくり抽出して樽で寝かせたもののようです。1杯の10万円で量は40ml、スプーン1杯2000円でも売ってくれるそうです。前述のカフェのオーナーはスプーンで飲んだ(と表現すべきか微妙ですが)らしいのですが、値段に見合った良い味だったそうです。
今はともかく、以前私は20gで120mlのコーヒーを抽出していて、これでも一般的にかなり濃い部類に入ると思っていたのですが、上には上がいるものです。そして、少しその境地に興味が湧きました。さすがにキロ単位のコーヒー豆から100〜200mlというトンデモ濃度のコーヒーを出すつもりはありませんが、その10分の1くらいにならできる気がします。
そんな感じでコーヒー豆100gくらいだったらいける、と思ったので、ちょっと真似してみることにしました。
大量の豆でコーヒーをドリップする
まずコーヒー豆の準備から。お店で買ってきたコーヒー豆を使うのは少し気後れしたので、手元で数年遊ばせているスペシャルティコーヒーの生豆を焙煎して使用することにします。本当は焙煎したてのコーヒーはあまり好きではありませんが、今回の目的に影響はあまりなさそうなので今は良しとします。
焙煎後の目標重量を100gとして、生豆は120g準備します。
ちゃちゃっと手網で直火焙煎します。焙煎度は深めで、中深煎り〜深煎り程度を目標にシャカシャカとコンロの上で炙ります。好みの焙煎具合になったら火から下ろしてよく冷まします。
焙煎後のコーヒー豆。適当過ぎたか。焙煎後の重量は98gでした。あと、肉眼だと写真ほど黒く感じません。
コーヒー豆が冷めたら、ドリップの準備です。V60ドリッパーだと早く落ちそうな気がしたので、ネルフィルターでドリップします。タッパーに入れて水に浸していたネルを冷蔵庫から引っ張り出して水気を切り、お湯を通して温めます。コーヒー豆を挽いたら、再度ネルの水気を切って、コーヒー粉が入る限り詰め込みます。
が、ここで少しアクシデント。コーヒー粉が全部入りません。押し込んだらなんとかなるでしょ、という気構えでしたが、なんともなりませんでした。目分量ですが、おそらく70〜80gほどしか詰め込めませんでした。
コーヒー粉を目一杯詰め込んだネルフィルター。これでも控えめにしました。
とりあえずドリップの準備ができたので、お湯を注いでコーヒーのドリップを始めます。目標の抽出量はうんと濃く20mlくらい、といきたいのですが、それだと味をちゃんと確かめる前に終わりそうなので、80mlの抽出を目指します。ドリップ方法は、点滴でゆっくり80ml以上のお湯をゆっくり落として、あとは必要量落ちるのを待ちます。また、いつもならお湯の温度を88℃まで下げますが、抽出に時間をかけるので、やかんからコーヒーポットにお湯を移して待たずにすぐドリップします。蒸らしは行いません。
お湯を点滴で、コーヒー粉の表面に置くようにゆっくりと、とりあえず100ml分注ぎます。あとはコーヒーが落ちてくるのを待ちます。落ちてくる量とスピードを見ながら、点滴でお湯を足していきます。
お湯を100ml注いだ時点のコーヒー。ここまでで10分かかりました。腕が結構しんどいですね。自分、何やってんだろうて気分になりました。
無の境地に達しそうになりつつも、お湯を適当に足したり入れ替えたりして、目標の80ml分のコーヒーが落ちたら、ドリップ完了です。かかった時間は34分でした。
お湯を注いで膨らんだ影響で粉が飛び散ったりでもうぐちゃぐちゃです、ぐちゃぐちゃ。
70〜80gのコーヒー豆で80mlくらいドリップしたコーヒー。見た目は普通です。
手間暇かけてドリップしたコーヒーの味はどうでしょう。カップで飲むのではなく、あえてスプーンで掬って一口、口に運びます。まず、当たり前ですが温い、というか冷たい。キッチンは寒いので部屋でドリップしてましたが、完全に冷めてます。そしてほのかに焙煎したてのコーヒー豆独特の香りがありつつ、水出しのような芳醇な雰囲気。そして当然ですが、苦味はガッツリ。普通のハンドドリップではお目にかかれない濃度で目が覚める感じです。
量が少ないので、余ったコーヒーで普通にもう1杯ドリップしてを飲むつもりでいましたが、想定以上に濃かったのでやめました。いやー、効きますね。カフェインを感じます。
感想・考察
大量のコーヒー豆で少量のコーヒーをドリップするこのやり方は、普通のハンドドリップとはまた違うコーヒーの楽しみ方だと思います。ただ、ちょっと贅沢すぎますね。原価を考えると、お店でも個人でもなかなか普段からこの飲み方はできないでしょう。また、そもそも論になりますが、好みもあると思います。柑橘系フレーバーのコーヒーが個人的には好きなのですが、この出し方ですごく美味しくてフルーティな、果実を凝縮したようなコーヒーができるビジョンが見えません。
ちょっと失敗だったのが、ネルの側面がビーカーの側面とくっついてしまって、そこからコーヒーが出てきてしまっていた点です。これは濃度に影響するかと思うので、ネルは浮かして、常にコーヒーがネルの最下部から落ちるようにするべきでした。まあ、ネルドリップのときは基本片手でネルを持っているので、普通のドリップの場合は特に心配ない点ではあるのですが。
コーヒーに関しては割と馬鹿げたことをやってきた身でこう言うのもなんですが、今回のドリップはなかなか常識から外れていて面白かったです。コーヒーポットを長時間保つ必要がある場合、高いテーブルでドリップすると腕がつかれるので、低めの机を利用した方が良いということも学習しました。これも、普通のドリップなら疲れないんですけどね。
自身を持ってオススメ、という感じではないですが、自分のようにコーヒー生豆を大量に手元に余らせて困っている人がいれば、気分転換にでもぜひ試してみてください。