自宅でできるのは直火焙煎だけじゃない。コーヒー豆を熱風焙煎してみる。

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自宅でもコーヒー豆の熱風焙煎できる方法を思いついてしまったので、挑戦してみました。

自宅で熱風焙煎をするのはハードルが高い

自宅でコーヒー豆の焙煎をするというと、ガスコンロと手網を使用した直火焙煎が一般的かと思います。というか、それ以外だとフライパンを使用して焙煎するくらいしか自宅でできる方法がないのが現状でしょう。過去に書いた、焙煎機の自作記事が人気なのもそれを物語っている気がします。

ところが最近、ふと、自宅でのコーヒー豆の焙煎方法についてアイデアがニョキっと湧いてきました。アイデアが出てきたのは、風呂上がりに髪の毛を乾かしているとき。そう、ドライヤーを使えばコーヒー豆を熱風焙煎できるのでは?という考えです。ドライヤーって、動かしながら頭に当てないと結構すぐ熱くなるし、それは逆に言えばずっと一箇所に集中的に当てていれば、かなりの高温になるということで、その熱をもってすればコーヒー豆もこんがりいっちゃうのではないか、というわけです。

最近はあんまり自分でコーヒー豆の焙煎をやらなくなり、キロ単位のコーヒー生豆を持て余していたのですが、久し振りにやる気が出ました。自宅焙煎に更なる一石を投じるために、熱風焙煎の可能性を今ここに書き記していきたいと思います。

熱風焙煎に必要な熱源について

・・・と、意気揚々だったのですが、少し調べてみたところ、普通のドライヤーでは熱風焙煎に足りうる火力を発揮するのは難しそうなのがわかりました。しかし、安全に家庭用電源から給電できて、高温の熱風を放出するものなんてドライヤー以外にあるのか・・・。と思って絶望しながらも色々調べていたら、意外とすんなり見つかりました。

Anesty ヒートガン【無段階調温可能と熱風2モートの組み合わせ】ホットガン 1500w 50-600℃ ホットエアガン 多用途 アタッチメント付 4種類ノズル 1本三角スクレーパー 【PSE認証】

これはヒートガンと呼ばれるもので、高温の熱風によってビニールの圧着したり、シールを剥がしたりするために使用するものです。ドライヤーに似ていますが、ドライヤーよりもさらに高温の熱風を出すことができ、消費電力が大きいですが、家庭用電源でも使用できる。本来の使用目的には沿いませんが、今回求めていたものはまさにコレ。値段もそれほど高くなかったので、すぐに購入しました。

箱に入ったヒートガン

そして、届いた商品がこちら。メーカー名の入った箱に入って届きました。

ヒートガンと付属物、説明書

内容物は、ヒートガン本体、ステンレスのノズルのセット、シールはがし用の棒と、説明書です。

袋を開けて、少し眺めてみます。今回購入したヒートガンの消費電力は1500Wと大きいため、本体の電源コードは太め。外観は熱風の排出口以外は全面プラスチックで、作りはチープです。温度調整はダイヤル式のため、狙った温度を出すのは難しいのが難点。

取扱に注意が必要そうな製品なので、説明書もちゃんと見ておきます。全体的に日本語がだいぶ怪しい説明書ですが、要件はちゃんと抑えてあり、どうやら安全に使うためには、連続使用は20分までという制限があるようです。20分連続使用したら10分休ませる必要があるそうなので、20分以内に焙煎を終わらせなければならないということになります。

ヒートガンのチェックがひとまず済んだので、その他の道具の準備をします。

熱風焙煎の準備をする

次に必要なのは、コーヒー豆を熱風に晒すための容器です。これについては直火焙煎同様、ステンレス製の手網を使用します。

新越ワークス 18-8ステンレス 煎り網 16cm

コーヒー豆焙煎用の手網

久し振りに取り出しました。そんなに頻繁に使用していないのですが、結構、ステンレスのメッシュが黒く焼けています。

これにコーヒー生豆を100g入れて、ヒートガンで焙煎していきます。焙煎はキッチンで行いますが、ヒートガンの熱風がガスコンロやシンクに当たるのはあまり良くなさそうなので、中華鍋の中で熱風に当てていきます。

ヒートガンによる熱風焙煎の準備

中華鍋なら耐熱もバッチリなので、いくら高温の熱風を撒き散らしても安心です。

これで焙煎準備は整ったので、いよいよ熱風による焙煎を行っていきます。

ヒートガンで熱風焙煎する

実際に熱風を当てていく前に、ヒートガンの温度のチェックします。風量はLowとHIGHの2つで、温度はダイヤルで調整します。まずは、風量Lowでダイヤルは最低温度にした状態でスイッチをオン。手をかざしてみると、全然熱くない。試しに温度調整ダイヤルを半周ほどひねってみて、風量をHIGHにしてみましたが、これでもドライヤーより熱くない感じです。温度が上がりきっていないだけかもしれませんが。

埒が明かないので、今回は風量HIGH、温度MAX、つまりこのヒートガンが出せる最高温度にして焙煎します。説明書によると50℃〜600℃の温度を出せるらしいので、理論値どおりであれば600℃ということになります。600℃の熱風を手で浴びて確認するつもりはないので、温度の確認はせずに焙煎スタート。

左手に手網、右手にヒートガンを持って、至近距離から熱風を浴びせます。ヒートガンを持った手は動かさず、左手を小刻みに動かして、なるべく万遍なく熱が当たるようにします。2分ほどすると、薄皮が剥けてきて、少し香りが立ってきて、ちゃんと焙煎が進んでいるのが分かりました。5分程経ったところで、一旦手を止めて写真を一枚。

熱風焙煎開始から5分が経過したコーヒー豆

5分時点でのコーヒー豆。色が変わって、ちゃんと火が通ってきているのが分かります。チャフが飛び散るので、中華鍋が下にあって正解でした。

再び焙煎を続けます。両手がふさがっていて、手網を揺らす手を交代することが出来ないので、かなりしんどい。それと、ヒートガンから独特なプラスチックのような匂いがしてちょっと臭い。二重苦を抱えつつ、更に5分たった時点のコーヒー豆の様子がこちら。

熱風焙煎開始から10分が経過したコーヒー豆

焙煎開始から10分経ったコーヒー豆の様子。良い感じに色づいているのがわかるでしょうか。ただ、手がしんどすぎてムラなく焙煎するのが難しい。

まだ飲むには焙煎が浅いので、更に5分間、頑張って焙煎を続けます。

熱風焙煎開始から15分が経過したコーヒー豆

焙煎開始から15分経ったコーヒー豆。十分に焙煎された色合いになりました。

シティローストくらいの十分に飲める色合いになり、20分のタイムリミットも近いので、焙煎はここでストップ。サーキュレーターで熱々のコーヒー豆を冷まして焙煎完了です。

焙煎したてのコーヒーを飲む

本当は焙煎したてのコーヒー豆を飲むのは好きではありませんが、結果を伝えるのが来週になってしまうのもアレなので、少しおいてからハンドドリップで飲むことにしました。ちなみに、今回使用したコーヒー豆は「ブラジル パッセイオ イエローブルボン パルプドナチュラル」というもので、スペシャルティコーヒーに分類されるものです。

ドリップのときコーヒー粉にお湯を注ぐと、暴れるように粉が膨らみます。それにお湯が引きずられないようにしながらゆっくりとお湯を注いでいって、130mlのコーヒーを抽出しました。

焙煎したて、淹れたてのコーヒーを一口飲むと、酸味ベースの味わい。ですがそれほど強烈ではなく、スッと引いて苦味だけが残るようです。焙煎したてということもあり、風味は荒々しく、洗練された味わいには感じません。ちょっと問題なのが、香りがイマイチなのは焙煎したてのせいなのか、ヒートガンのせいなのか、どちらか良くわからない点です。ただ、ちゃんとコーヒーになっていることは分かりました。

今回の結果

今回の結果をまとめると、以下のようになります。

  • 自宅で熱風焙煎はできます

考察・感想

ドライヤーからの思いつきでやってみましたが、ちゃんと熱風焙煎することが出来たので成功と言って良いのではないかと思います。そう、自宅で熱風焙煎はできるということです。

現状の課題としては、まず焙煎するのがしんどいことです。左手に手網、右手にヒートガンなので、手は上がりっぱなしだし、左手は動かし続ける必要があります。まあ、網を置いてヒートガンの方を動かすのでも良いのですが、それだと表面にあるコーヒー豆にしか熱が当たらず、焙煎にムラがでてしまうでしょう。このしんどさの解消のためには、せめてコーヒー豆の方は自動で動くようにしておくとか、ヒートガンをぶら下げたりして固定しておくとかして、片手だけ動かして焙煎できるようにする仕組みづくりが必要そうです。

次に、熱風の温度管理についてです。今回はとりあえずヒートガンで出せる最高温度で焙煎しましたが、理論値通りならそれは600℃ということになります。少し調べてみると、コーヒー豆の熱風(に限らずかもしれませんが)焙煎においては200℃前後が一般的な温度のようなので、今回は温度が高すぎたということになります。それでも結構時間がかかりましたが・・・。

すると、本来適切な温度まで下げて焙煎を行うべきなのですが、今回用意したヒートガンには温度を指定して調整する機能がないため、適切な温度に調整することができません。また、連続使用時間が20分となっているので、温度を下げた場合、20分以内に焙煎が完了しない可能性も出てきてしまいます。すると必要なのが、温度をある程度指定して調整できて、かつ長時間使用できるヒートガンですが、それを用意するにはちょっとコストが掛かります。さらっと見た感じ、それに該当する製品が無いわけではないのですが・・・。

個人的なイメージですが、熱風焙煎というのはじっくり長時間かけて丁寧に、コーヒー豆内部の水分を飛ばしつつ行われるものだと考えています。今回の場合、高温で短時間で焙煎を済ませた分、それが出来ていないのではないかと考えています。つまり、文字通り熱風でコーヒー豆の焙煎が出来ていても、あくまでプロの域には遠く及ばないということです。

とは言っても、それはあくまで今回の焙煎の話で、前述したように温度調整がちゃんと出来て長時間使用できるヒートガンやそれと同系統の物があれば、自宅でもちゃんとした熱風焙煎が楽しめるはずだと思っています。少なくとも今回は、自宅で熱風焙煎をする方法があるということは証明できたと思うので、あとはこれをどうやって昇華させるかだけでしょう。

さいごに

わざわざヒートガンを買ってまで試してみたのに、コーヒー豆が全然焙煎できねえ!ということにはならなくてホッとしています。あとはこれをより手軽に、より高度なものにしていければ良いですが・・・。それはまたしばらく先になるかもしれません。興味がある人は、ぜひ一度自宅で熱風焙煎、試してみてください。

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