一番コーヒーを美味しくドリップする方法は?大手3社の淹れ方を比較する

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  •  コーヒーの抽出
  •  お湯の注ぎ方と味わい

コーヒーを淹れるとき、同じ器具を使用しても、お湯の温度や注ぎ方など、人によって微妙に異なる部分がでてきます。それらの違いによって、一体どれだけコーヒーの味わいに差が出るのでしょうか。

微妙に異なる”コーヒーの美味しいドリップ”

はじめてコーヒーを淹れる時、一体どうやってコーヒーを淹れるでしょうか。コーヒーを淹れることは難しくはありませんが、本当にはじめての場合、どのようにして良いか意外とわからなかったりします。そのような場合、知り合いに聞くとか、コーヒー豆屋さんに聞くとか、ネットで調べるなどしてコーヒーを淹れると思います。

でも、知り合いのいつものコーヒーの淹れ方も、コーヒー豆屋さんのオススメの淹れ方も、ネットで紹介されている美味しいコーヒーの淹れ方も、恐らく全く同じということはありません。コーヒー豆の使用する量も違えば、お湯の温度も、注ぎ方も、蒸らし時間も違うでしょう。

つまり、美味しいコーヒーのドリップ方法が紹介する人によって微妙に異なるので、本当に美味しい淹れ方はどれなのかが分からないということです。これだと、どの方法でコーヒーを淹れるほうが良いのか迷ってしまって、なんだかコーヒーを淹れることのハードルが上がってしまっているようで、少しモヤモヤしてしまいます。

そこで今回は、コーヒー関連の大手メーカーが提唱するコーヒーのドリップ方法を比較して、本当に美味しいコーヒーの淹れ方はどの方法なのか検証してみたいと思います。ただ、コーヒーの淹れ方は端から端まで見れば無数にあるため、これはあくまで選択肢選択肢を少し狭める程度になると思いますが、初めてコーヒーを淹れる人の気が少しでも楽になれば良いなと思います。

コーヒーを淹れる条件

今回淹れたコーヒーは、以下の条件のもと抽出しています。

  • 使用したコーヒー豆:エルサルバドル サンカルロス
  • 焙煎度:シティローストぐらい
  • コーヒー豆の粗さ(ナイスカットミルのメモリ):4
  • ドリッパー:カリタ 101ロトブラウン(陶器)
  • コーヒーポット:ユキワ M-5
  • フィルター:カリタ 101ペーパーフィルター(ホワイト)
  • 秤:ハリオ ドリップスケール
  • 豆の使用量:後述
  • お湯の温度:後述
  • 蒸らし時間:後述
  • 抽出量:後述

コーヒーを淹れる方法を決める

今回は、コーヒー器具メーカーではお馴染みの”カリタ”、コーヒー販売業で有名な”キーコーヒー”、缶コーヒーからコーヒーセミナーまで手広い大手コーヒー事業メーカー”UCC”のホームページで公開されている美味しいコーヒーの淹れ方を実際に試してみて、それぞれの方法で淹れたコーヒーを飲み比べてみたいと思います。

使用するドリッパーですが、メーカーによって使用するドリッパーが異なったり、ドリッパー別で異なるドリップ方法を紹介しているのですが、唯一カリタの3つ穴ドリッパーを使用したコーヒーの淹れ方がそれぞれで紹介されていたので、今回はカリタのロトドリッパーを使用してコーヒーを淹れていきます。

ステンレスの受け皿に入ったスペシャルティコーヒー

コーヒー豆はシティロースト程度の中浅煎りのコーヒー豆を使用します。品質の良いスペシャルティコーヒーです。

中挽きに挽かれたコーヒー粉

中挽きにしたコーヒー豆。今回は全てこの粗さのコーヒー豆を使用してコーヒを淹れていきます。

コーヒーのドリップ①:キーコーヒーが提唱する美味しいコーヒーのドリップ

まず、キーコーヒーがホームページで公開している美味しいコーヒーの淹れ方です。詳細についてはキーコーヒーの公式ホームページの紹介ページを見て頂ければと思いますが、要点をざっくりとまとめると以下のようになります。

  • コーヒー豆の量:10〜20g
  • コーヒー豆の粗さ:中挽き
  • 抽出量:120ml〜140ml
  • お湯の温度:熱湯(沸きたて?)
  • 蒸らし時間:20秒

お湯を注ぐときは、上下に高低をつけながら、”の”の字を描くように1週する。中央が凹みすぎないうちに再度お湯を同じ様に注ぐ。お湯は注ぐたびに徐々に少なくして、5、6回に分けて全量を注ぐ。

個人的には、お湯を注ぐときに高低差をつけながら注ぐというのが、よく聞くコーヒーの美味しい淹れ方と異なる点であるため、これを上手に出来るかがポイントのように感じます。

コーヒーのドリップ②:UCCが提唱する美味しいコーヒーのドリップ

続いては、UCCが公開している美味しいコーヒーの淹れ方について。写真付きで詳しく説明があるので、気になる人はUCC公式ホームページをチェックしてみてください。以下は要点です。

  • コーヒー豆の量:10〜12g
  • コーヒー豆の粗さ:中挽き
  • 抽出量:140ml
  • お湯の温度:95℃
  • 蒸らし時間:20秒

お湯はなるべく中心に、”の”の字を描くようにして注ぐ。80ml注いだら一旦止めて、水面が上から1/3程度減ったら、40ml注いで止めて、また1/3減ったら20ml注ぐ。

数年前にUCCが開催したコーヒーセミナーに行った事があるのですが、そのときもこのお湯を3回に分けて注ぐ3投式と呼ばれるお湯の注ぎ方のレクチャーを受けたことを思い出しました。その頃から変わっていないことを考えると、この3投式がUCC流の美味しいコーヒーを淹れるためのポイントなのかもしれません。

コーヒーのドリップ③:カリタが提唱する美味しいコーヒーのドリップ

最後にカリタが紹介する美味しいコーヒーの淹れ方です。カリタ公式のハンドドリップの紹介ページで詳細な動画で紹介されているので、初めてコーヒーを淹れる人は一度見てみるのが良いでしょう。

  • コーヒー豆の量:30g
  • コーヒー豆の粗さ:中挽き
  • 抽出量:360ml
  • お湯の温度:92℃
  • 蒸らし時間:30秒

蒸らしの後、2投目のお湯は、”の”の字を描くように内から外へゆっくり3週ほど注ぐ。コーヒー粉の中心が凹んできたら、次は2週分お湯を注ぐ。その後も同様の手順を繰り返して、規定量を抽出する。

カリタはキーコーヒー、UCCとコーヒー粉の量と抽出量、蒸らし時間が大きく異なりますが、この違いがどう味わいに影響を与えるのでしょうか。

3つの方法でコーヒーをドリップする

キーコーヒー、UCC、カリタが推奨するコーヒーの淹れ方が確認できたら、早速コーヒーを淹れていきます。まず、キーコーヒーの推奨する淹れ方でコーヒーを淹れてみます。

コーヒー豆は10〜12g、抽出量は120ml〜240mlと幅があったので、UCCに合わせて12gで140mlのコーヒーを抽出することにしました。お湯を沸かしたらサーバー、ドリッパー、真空断熱タンブラー(コーヒーカップ)に注いで保温します。コーヒー豆を中挽きにしたら、ペーパーフィルターをドリッパーにセット。いつもはペーパーフィルターを濡らすのですが、今回は濡らさず、コーヒー豆を投入して平らにします。

キーコーヒーのサイトには、お湯は”熱湯”とのみ書かれていて温度の指定が見受けられなかったので、沸騰したてのお湯を使用します。コーヒー粉全体に行き渡るようにお湯を注いで、ポタポタとコーヒーが少し垂れてきたら20秒待つ。ドリッパーの中央でお湯を上下させて泡を作り出し、ある程度泡が出てきたら手前から”の”の字を描きつつ、お湯を上下して高低をつけながら1周します。以降、お湯の量を徐々に減らしつつ、コーヒー粉の中央が凹んできたら同じ様にお湯を注ぎ、140mlのコーヒーが抽出できたら完了です。

淹れたてのコーヒーは真空断熱タンブラーに注いで暖かい部屋へ置いて、すかさずUCC方式でコーヒーを淹れていきます。使用するコーヒー豆は12g、抽出量は140ml。沸かしたお湯で器具を保温し、フィルターは濡らさずにコーヒー粉をドリッパーに収めます。お湯の温度は95℃に調整し、蒸らしは20mlのお湯を注いで20秒。キーコーヒーと同様、”の”の字を描くようにお湯を注ぎますが、こちらはなるべく中心で、小さく”の”の字を描いていきます。最初に80ml注ぎ、溜まったお湯が1/3程度減ったら40ml注ぎ、また減ったら20ml注いで、140mlのコーヒーの抽出は完了。

最後に、カリタ方式でコーヒーを淹れます。コーヒー豆の量は30g、抽出量は360ml。器具を保温し、フィルターは濡らしません。お湯の温度が92℃になったら、コーヒー粉と同量の30mlのお湯を全体にまんべんなく注いで蒸らします。30秒蒸らしたら、内側から外側へ、”の”の字を描くようにゆっくり3週ほどお湯を注ぎます。コーヒー粉が凹んできたら2回目を注ぎ始め、2周したら一旦ストップ、また凹んだら3回目、4回目とお湯を注いで、360mlのコーヒーが抽出できるまで繰り返します。

3杯のコーヒーが淹れ終わったら、その味わいを確かめます。

コーヒーを淹れた後のカリタのコーヒードリッパー

カリタ方式でコーヒーを淹れ終えた後のドリッパー。美味しいコーヒーを淹れられていれば良いですが・・・。

3杯のコーヒーを飲み比べる

それぞれ異なる方法で淹れたコーヒーを飲み比べます。まず、キーコーヒーの推奨する方法で淹れたコーヒー。口に含むと、いつも自分が淹れているコーヒーよりもコーヒー豆の分量が少ない事もあって、ちょっと薄め。苦味のほうがやや強いですが、酸味も感じます。甘みはほどほど。

次に、UCCの推奨する方法で淹れたコーヒー。キーコーヒーと同じ分量で淹れましたが、こちらのほうが味が濃く感じます。そして、キーコーヒーのものよりも気持ちスッキリしている感じ。雑味が少ないのでしょうか。ただ、酸味はキーコーヒーのものよりも若干弱めに感じます。

最後にカリタの推奨する淹れ方で淹れたコーヒー。キーコーヒー、UCCはコーヒー豆と抽出量が一緒でしたが、こちらはコーヒー豆の量も抽出量も異なるため、それが味わいにどう影響を与えるのか。一口飲むと、味が濃い。使用したコーヒー豆の量が多い分、コーヒーの抽出量も比例して多くなっていますが、その比率以上に濃く抽出されています。そして香ばしさが強い。ただ、少し味わいが迷子になっているというか、はっきりしない、個性を引き出せていない気がします。

コーヒーを淹れている最中は写真が取れないため、せめてコーヒーの色味の確認くらいはしておきましょう。

試験管に入ったコーヒー

左から、キーコーヒー、UCC、カリタの推奨する方法で淹れたコーヒーです。やはり味の濃いカリタの色味は濃く見えます。

ライトアップした試験管に入ったコーヒー

ピッカーン!とこれなら一目瞭然です。ただ、キーコーヒーとUCCはほとんど一緒のようですね。やはり分量が変わらなければ、濃度に影響を与えるのは難しいのでしょうか。

今回の結果

今回の結果をまとめると、以下のようになります。

  • どんな”美味しいコーヒーのドリップ”でも、条件が一緒ならコーヒーの味わいに大きな差は生まれない

考察・感想

3種類の方法でコーヒーを淹れましたが、結果に書いたとおり、お湯をドリッパーの側面にドバドバ注いだり、アクを撒き散らすなど、よほど雑にコーヒーを淹れなければ、どんな方法でも大して差は無いのではないかと思いました。

コーヒー豆の使用量、粗さ、蒸らし時間、コーヒー豆の抽出量が一緒で、お湯の温度と注ぎ方だけが違ったキーコーヒー方式とUCC方式のドリップですが、出来あがったコーヒーの味は微妙に違う気がしましたが、まあほぼ一緒でした。このことから、コーヒーのお湯の注ぎ方が異なることで、味わいに影響を与えることは殆ど無いと考えて良いと思っています。

他2つと条件が大きく異なるカリタ方式で淹れたコーヒーは、味が濃いコーヒーになりましたが、これは無論コーヒー豆の分量が多く、かつ蒸らし時間が長かったためで、お湯の注ぎ方によって味が濃くなったということはありません。条件が一緒なら、キーコーヒー方式のお湯の注ぎ方でも、UCC方式のお湯の注ぎ方でも、ほぼほぼ同じ味わいのコーヒーが出来るでしょう。

今回の飲み比べを経て思ったのが、それぞれが考える美味しいコーヒーというのは、コーヒー豆の量や粗さ、お湯の温度や抽出量、蒸らし時間の長さなどによって導き出されるもので、お湯の注ぎ方云々はあまり気にしなくても良いのではないかということです。もちろん、それはお湯をある程度自在にコントロールできるという前提があってのこと、というのは忘れてはいけません。

つまり、美味しいコーヒーを淹れたいと考えたときに必要なのは、自分が美味しいと思うコーヒーを淹れることが出来る条件と、お湯をコントロールする技術を身につける事であって、”の”の字を描くとか、高低差をつけるとかそういう”型”にはまる必要は無いのではないかと思います。美味しいコーヒーを淹れたいと思ったら、誰かのレシピに従うのではなくて、それは足がかり程度にして様々な条件を試し、そしてその過程で自在にお湯を注ぐように出来るようになる事が重要だと思います。

誰かが推奨する”美味しいコーヒーのドリップ”というのは、その人が美味しいと思うコーヒーの淹れ方のことであって、あなたにとって美味しいコーヒーの淹れ方ではない、ということではないでしょうか。・・・何だか一種の悟りの境地に達した気分です。

この方法が一番美味しいコーヒーを淹れられる!的なオチになると予想していたので、今回の落とし所には自分でも少々困ってしまいましたが、つまり、美味しいコーヒーの淹れ方の正解を知っているのは自分だけということです。そういった意味では、誰かが言う美味しいコーヒーの淹れ方を正しいとしても、間違いとしても良いですし、どれを試したって正解であり、間違いであるということです。

さいごに

なんだか途中から何を言いたいのか分からなくなってしまいましたが、そのとき飲んだコーヒーが美味しいと感じたら、それが全てでは無いでしょうか。・・・コーヒー飲みすぎたせいか、ちょっと哲学思考に傾倒してきたので、今回はこのへんで。

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