ハンドドリップのお湯の落とし方による、コーヒーの味の違い その2

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  •  コーヒーの抽出
  •  お湯の注ぎ方と味わい

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1回だけやってしばらく放置していた検証を掘り起こすシリーズです。ハンドドリップ時のお湯の落とし方の違いによる味の検証をします。

はじめに

1回目は、3種類のお湯の落とし方を、お湯を落とす勢いの違いを主題としてその違いを検証しました。今見返してみると、面白いというか、もっと掘り下げ甲斐のあるというか、美味しいコーヒーを入れるために必要な事項を調査するために欠かせない観点の検証であると思います。ですので、これからも少しずつ掘り下げていくつもりで、今回はその足がかりのような感じです。

さて、「お湯を落とす勢いの違いを主題として」と書きましたが、その当時は気が回らなかったのですが、よくよく考えると抽出にかける時間以外にもお湯をどの範囲にかけるか、という観点が無かったことに数時間前に気がつきました。そこで今回はドリッパーに盛られたコーヒー粉にお湯を注ぐ際に、その範囲の違いでどの程度味わいが変わってくるのか、という観点で検証を行いたいと思います。ただ、手元のコーヒー豆の在庫状況的に2杯が限界だったので、今回はとりあえず2パターンで試します。

条件

今回の検証は以下の条件下で行いました。

  • 使用したコーヒー豆:ブラジル メリナ ナチュラル
  • 焙煎度:ミディアムィローストぐらい
  • コーヒー豆の粗さ(ナイスカットミルのメモリ):4
  • ドリッパー:カリタ ロト101(陶器)
  • コーヒーポット:ユキワ M-5
  • フィルター:カリタ カリタ コーヒーフィルター101(ホワイト)
  • 秤:ハリオ ドリップスケール
  • 豆の使用量:20g
  • お湯の温度:94℃
  • 抽出量:120cc

コーヒー粉全体にお湯を注ぐ場合

1杯目は、コーヒー粉全体にまんべんなくお湯を注いで、120ccのコーヒーを抽出します。ドリッパーにコーヒー粉を入れたら、少し均してお湯を真ん中から注いで行きます。少しずつ円を描きながら外側に向けてお湯を注いで行って、しかし端っこにはかからないように。端っこぎりぎりまでお湯を注いだらまた円を描きながら中心に戻って、規定量を抽出するまでその繰り返しです。

コーヒー粉の全体にお湯を注いだ場合

抽出後のドリッパーはこんな感じで、全体的に荒れているというか、お湯が通った跡が見られます。

味は、口に含むと強い酸味が先に感じられ、後から苦味が口全体に広がります。しかし後にはほとんど残らず、ほんのりと苦味が残る程度。クッキリとした味わいで面白いですが、これだけはなんとも言えません。

コーヒー粉の中心にのみお湯を注ぐ場合

2杯目は、よくあるやつで、お湯をコーヒー粉の中心に500円玉くらいの大きさで注ぎます。真ん中からお湯を落とし始めて、円を描いて徐々に大きくしていき、500円玉くらいになったらまた戻って、規定量のコーヒーが抽出できるまでそれを繰り返して行きます。

コーヒー粉の中心にのみにお湯を注いだ場合

こちらは分かり易く、中心のみ凹んでいるのがわかります。

飲んでみると、味の印象は一緒で、違いはかなり微妙。こちらの方がお湯を全体にかけて抽出したものよりちょっと濃いめに感じるような、苦味がほんの少し強いような、香りが微妙に劣るような・・・。何度も交互に飲んでみても、歴然とした差は見当たりませんでした。

今回の結果

今回の結果をまとめると、以下のようになります。

  • コーヒーにお湯を注ぐ範囲は、ほとんど味に影響を与えない可能性がある

考察など

なんというか、いろんな可能性が思い浮かびました。今疑問なのは、コーヒーの成分はお湯を注がれた直後がもっとも溶け出すのか、それともある程度お湯を注がれる事で本質の部分が溶け出してくるのか、という点です。今回、お湯の注がれる範囲を変えても目に見えて味に変化は見られませんでした。検証前の予想としては、お湯を真ん中だけに注いだ場合、もちろん全体に注ぐよりもコーヒー粉がお湯に当たる総面積は低くなり、結果的に抽出されるコーヒーは全体にお湯を注いだものよりも味が薄かったり、コーヒー豆の持つ魅力的な部分が薄まるだろう、と思っていました。しかし、今回の結果からはそのようなことはなく、むしろ中心にのみお湯を注いだ場合の方が濃い気すらしました。この結果だけ見ると、最初に書いた2択の答えとしては、後者、ある程度お湯を注がれることで本質の部分が見えてきて溶け出してくる、という可能性の方が高くなるように感じます

しかし、お湯を注いでいた時に気づいたのですが、真ん中だけにお湯を注いでいても、なんというか全体に行き渡っているような感じがしました。もちろん、表面にお湯が染み出してくるほどではありませんが、真ん中にしかお湯を注いでいないはずなのに、全体が膨らんでくるのです。これは、お湯が落ちる速度よりもお湯を注ぐ速度の方が早く、お湯がドリッパーに溜まっていたせい、もしくは、複雑に積み重なったコーヒー粉の層をお湯が行き渡る際に多方に枝分かれして、結果的に全体にお湯が行き渡った、つまりお湯が真下ばかりに落ちるわけではないから、という事が考えられます。でも、どちらにせよ全体にお湯を注いだ方がお湯がコーヒー粉に触れる面積が大きのは明らかのはずです。そうなると考えられるのは、お湯が必ずしも真下に落下していくとは限らないという事を含めると、良かれと思ってコーヒー粉全体にお湯を注いでいたつもりが、端っこの方にお湯を注いだ際に、お湯がドリッパーの側面の方に流れ出てしまって、結果的にそのお湯はコーヒーの成分を十分に含まないままにサーバーへ落ち、結果的に本当に若干ですがコーヒーが中心のみにお湯を注いだ場合と比べて薄くなってしまったということです。

これらについては、コーヒー粉にお湯を注いだとき、お湯がどのような動きをして落下していくかを調べる必要があります。お湯がほとんどまっすぐ落ちるなら、コーヒーの成分はお湯を当てた直後よりも長時間当てるほうがより抽出できる可能性が高くなりますし、多岐にわたって広範囲に分散しながら落下するなら端っこをお湯が通ったせいで薄くなった可能性が高くなります。

つまり、結果に書いたように、今回の検証の本質としてはお湯を注ぐ範囲がどうこういうというのはあまり関係がない気がしています。問題は注がれたお湯すべてがちゃんとコーヒー粉を通してサーバーに滴下していたか、コーヒーの成分がより多く抽出されるのタイミングはどこか、という部分に今後焦点を当てていく必要があると考えています。

さいごに

有効な結果は得られませんでしたが、次の課題は生まれたのでよしとしておきます。この検証のゴールには、美味しいコーヒーを入れるための必須条件のうちの一つが手に入ると考えているので、これからの検証が楽しみです。

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