ハンドドリップのお湯の落とし方による、コーヒーの味の違い その1
- コーヒーの抽出
- お湯の注ぎ方と味わい
中心から円を描くように、というのがよく聞くハンドドリップでのコーヒーの入れ方ですが、それ以外の場合はどうなるんだろう?というテーマの検証です。
はじめに
またまた「よく聞く話」なのですが、コーヒーの美味しさを司る割合において、抽出は1割と言われてるそうです。要するに私たちのような自宅でコーヒーを飲む人間の手元にコーヒー豆がたどり着くころには、9割コーヒーの味は決まっているという事になります。残り1割はどの程度の影響を及ぼすのか、3種の入れ方でそこを探りたいと思います。
条件
今回の検証は以下の条件下で行いました。
- 使用したコーヒー豆:ホンジュラス HG
- 焙煎度:フルシティローストぐらい
- コーヒー豆の粗さ(ナイスカットミルのメモリ):4
- ドリッパー:カリタ ウェーブドリッパー185(ステンレス)
- フィルター:カリタ ウェーブフィルター 185(白)
- 秤:ハリオ ドリップスケール
- 豆の使用量:20g
- お湯の温度:96℃
- 抽出量:120cc
- 蒸らし時間:30秒
- 蒸らしに使用したお湯の量:25cc
- 3投式の抽出時間:約2分10秒
- 一気での抽出時間:約1分20秒
- 点滴での抽出時間:約5分40秒
3投式で抽出した場合
いつも私がコーヒーを入れるときは、この「3投式」と呼ばれる方法でお湯を注いでいます。名前の通りお湯を3回に分けて注ぐ方法で、某コーヒーセミナーで教えてもらって以来、スタイルの決まっていなかった私のスタンダードになっています。
25gのお湯で20gのコーヒー豆を30秒蒸らしたら、低めの位置でフィルターにかからないように、円を描くように細くお湯を注いでいきます。70ccに達したら一度手を止め、お湯がすべて落ち切る前に再度100cc程度まで注ぎ、また落ち切る前、再度お湯を注いで130cc程度まで注いだら、全てのコーヒーが落ち切る前にドリッパーを外して抽出終了。蒸らし時間を含めておよそ2分10秒で抽出しました。なお、今回は濾紙を切らしてしまっていたので、これまでと違って、カリタのウェーブドリッパーを使用しています。
抽出後のドリッパーの後はこんな感じ。
こちらは抽出したコーヒー。コーヒーは黒くてピントが合わないのでピンぼけしちゃいます。F値のせいもありますが。
味わいとしては、普段通りといった感じ。飲んだ時は酸味が効いていて、後味は苦味とちょっと甘いような、ワインのような余韻で、味はかなりしっかりと出ています。
一気に抽出した場合
今度はかなりぞんざいに、お湯を130cc程度まで一気に注ぎ込み、すべて落ち切る前にドリッパーを外して抽出します。抽出時間は蒸らしを含めて1分20秒。
抽出の痕は勢いを表します。
3投式に比べると色が薄いですが、思ったよりは普通かも。
味は、想像以上にマズい。ただの酸っぱいお湯を飲んでいるよう気分。色味的にはもう少し味が出ていても良いと思ったのですが、どうやら色と味は関係がないようです。
点滴で抽出した場合
最後は逆に丁寧に、点滴で注いでいきます。といっても厳密なポタポタ、という点滴ではなく、ポタタタチョロロロタタタ、というイメージです。抽出時間は蒸らしを含めて5分40秒。これは腕力との勝負になりました。
ゆっくり注いだので、凹みはなく平らです。
コーヒーは相変わらず。
こちらは、抽出時間をかけた分もあってか、初めから飲み頃の温度。味は時間をかけた分濃いかと思ったらそうでもなく、3投式より薄く、後味もあまり残らず。でもこちらのほうが、まろやかなで飲みやすいような気がしました。こちらを飲んだ後に3投式の方を飲むと別の物のように感じます。
今回の結果
今回の結果をまとめると、以下のようになります。
- コーヒーの味わいは、お湯の落とし方で大きく変化する
- コーヒーの抽出に時間を掛けるほど、濃いコーヒーが抽出されるとは限らない
考察など
一度にお湯を注いだほうが、お湯がコーヒー豆に触れている時間が長くなるので、その分濃くなっても良いとは思うのですが、むしろ薄いという結果に。これについては、今回コーヒー蒸らし時間を30秒としましたが、これ以降もコーヒーはいわば「蒸らされている状態」であり、時間が経つほど蒸らし時間も長いとも取れます。3投式の2分10秒という抽出時間と、一気に抽出した1分20秒の差の50秒、この50秒の間の「蒸らし」が味の濃さに影響を与えているのかもしれません。つまり、味の濃さはお湯がどれだけコーヒー豆に触れているかではなく、どれだけ長く蒸らしたコーヒー豆にお湯を当てるか、という部分が影響していると考えます。
しかし、これを正しいとすると、点滴で抽出したコーヒーは3投式の物よりも濃いコーヒーでなければいけないのですが、実際はそうではありませんでした。これについては、点滴に時間をかけた分、お湯の温度が下がってしまったという点が原因として考えられ、お湯の温度が低かったためコーヒーの成分がお湯に溶けにくくなってしまい、結果として蒸らし時間に見合った濃さのコーヒーが抽出されなかったものと考えます。なお、お湯の温度が低いほどコーヒーが薄く抽出されるというのは、ほぼ確実でしょうがあくまで推察なので、そこのところは個別で検証が必要だと考えます。
それと、一気に抽出したコーヒーは酸味しか感じられなかったことから、コーヒーの抽出において蒸らしというのは、主に苦味を引き出すための工程であるとも推測できます。
さいごに
今回は大げさな抽出方法で検証を行いましたが、結論としては、1割という割合はかなり大きいと言えるでしょう。今後はますます、お湯の落とし方も検証していく必要がありそうです。また、結果を整理する過程でまた課題が生まれたので、そちらも追々やっていきたいですね。