お湯を注ぐ高さを変えるとドリップコーヒーの味はどうなる?

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お湯を注ぐ高さとコーヒーの味の関係

ハンドドリップでコーヒーを淹れるときは、なるべく低い位置からドリッパーに向けてお湯を落とす、というのが定石かと思います。言われなくてもわざわざ高いところからお湯を注ごうなんて思わなかったので、その点について特にこれまで疑問はありませんでしたが、最近ふと、そんな単純なことについて検証していなかったことに気が付きました。

ということで今回は、お湯を低いところと高いところから注いでコーヒーをドリップしたとき、それぞれのコーヒーの味に違いはあるのか?という点について検証していきたいと思います。最近はコーヒーと他のものを組み合わせて飲んでみたりすることが多かったので、こういうシンプルな検証をやるのはちょっと久しぶりです。

コーヒーを淹れる条件

今回淹れたコーヒーは、以下の条件のもと抽出しています。

  • 使用したコーヒー豆:コロンビア ビジャファティマ レッドブルボン
  • 焙煎度:シティローストぐらい
  • コーヒー豆の粗さ(ナイスカットミルのメモリ):4
  • ドリッパー:ハリオ V60透過ドリッパー01(ガラス)
  • コーヒーポット:ユキワ M-5
  • フィルター:ハリオ V60ペーパーフィルター01W(ホワイト)
  • 秤:ハリオ ドリップスケール
  • 豆の使用量:20g
  • お湯の温度:約88℃
  • 蒸らし時間:20秒
  • 抽出量:130ml

お湯を注ぐ高さを決める

まずは、お湯を注ぐ高さのパターンを決めます。2パターンだとちょっと物足りなさそうなので、今回は低位置、中位置、高位置の3パターンで試します。まず低位置ですが、ドリッパー上部から約1cmほどの高さからお湯を注ぐパターンとします。

V60ドリッパーから1cmの高さ

ドリッパーから飛び出たフィルターの端と同じくらいの高さが約1cm。実質V60ドリッパーの最低位置というところでしょうか。いつもこのくらいの高さからお湯を注いでコーヒーをドリップしています。

次に中位置。ドリッパーの上部から約5cmの高さとします。

V60ドリッパーから5cmの高さ

このくらいで5cm。結構離れます。普段、間違ってもこの高さからお湯を注ぐことはありません。

最後に高位置。こちらは、ドリッパーの上部から10cmの高さとします。

V60ドリッパーから10cmの高さ

ドリッパーから10cmでこの高さ。最初は30cmくらい上からカマしてやろうと思っていましたが、そこまで高いと多分お湯が場外いきますね。

こんな感じのポジション取りで、コーヒーを3杯ドリップします。

異なる高さからお湯を落としてコーヒーをドリップする

3パターンの高さの位置取りを決めたら、早速コーヒーをドリップします。まずドリッパーから1cm、つまりいつも通りにコーヒーをドリップします。20gのコーヒー豆を挽いて、88℃まで下がったお湯で20秒蒸らして、細く注ぐようにして130mlのコーヒーをドリップします。注いだ後の出がらしはこんな感じ。

V60ドリッパー上部1cmの高さからお湯を注いだコーヒー粉の出がらし

ドリッパーから1cmの高さでコーヒーをドリップした後の出がらし。お湯が注がれた箇所が見て取れます。

1杯目をドリップし終えたら、すかさずコーヒーポットにお湯を注ぎ足して2杯目のコーヒーをドリップします。ちなみに、蒸らしだけは全てのパターンで低位置から満遍なく丁寧に行います。蒸らしのお湯を注ぎ終えたら、定規で5cmの高さを再度チェックして、蒸らしが終わったらチェックした高さをキープしつつお湯を注ぎます。

やってみて分かったのですが、約5cmの高さからお湯を注ぐのは腕が結構しんどいです。コーヒーポット自体も肉厚で重量ありますし、常に安定してお湯を注げるように余分お湯を入れてあるので結構重たいですし、更に半端な腕の位置をキープしなければならないので思いの外疲れます。なんとかドリップし終えたらコーヒーカップに注いで、出がらしをチェック。

V60ドリッパー上部5cmの高さからお湯を注いだコーヒー粉の出がらし

約5cmの高さからお湯を注いだ後の出がらし。高い位置からお湯を注ぐ分、もっと凹むかと思ったのですが、そうでもないようです。

そして最後に10cmの高さからお湯を注いでコーヒーをドリップします。案の定、腕がしんどいのですが、それに加えて少し注ぎ方に勢いがつくとお湯が中心から外側に逸れるし、びちゃびちゃ弾くしでストレスフルです。なんとかドリップし終えたら、こちらも出がらしを確認。

V60ドリッパー上部10cmの高さからお湯を注いだコーヒー粉の出がらし

約10cmの高さからお湯を注いだ後の出がらしがこちら。やっぱりそんなに凹んでいない。ただ、1cmの高さから注いだ場合とはコーヒー粉の様子が違うのも分かります。

頑張って3杯のコーヒーをドリップしてそれぞれの出がらしのチェックを終えたら、次は飲み比べて味のチェックをしてみます。

3杯のコーヒーを飲み比べる

まずはドリッパーから約1cmの高さからお湯を注いだコーヒー。口に含むと強い酸味が全面に感じられ、苦味はあまり感じられません。酸味はすっと消えて、後味はまろやかに感じられます。コーヒーと言うより紅茶を飲んでいるような感覚です。

1杯目の味を確認できたら、次に約5cmの高さからお湯を注いだコーヒー。口に含むと、強い酸味と、ちょっと渋み。時間差でドリップしているので温度差があるのでそのせいかもしれませんが、味は違うように感じます。雑味が多くなったというか、クリアさが無くなった様に感じられました。

最後に、約10cmの高さからお湯を注いだコーヒー。飲むと、5cmの高さから注いだコーヒーとあまり変わらない印象。気持ち、パンチが強めになった気がしますが、温度差があるのでなんとも。

温度差をなくすために少し時間を置いて、それぞれのコーヒーが冷めてから改めて飲み直しましたが、やっぱり5cmと10cmの高さからお湯を注いだコーヒーのほうがパンチが強い、というんでしょうか。ガツンと来る分、クリアさに欠ける雑な味わいに感じられました。

考察・感想

まず、コーヒーの味が云々の前に、腕が疲れるという時点で高いところからお湯を落とすメリットは無いと思います。また、お湯を注ぐ位置が高くなるほど手元がブレたときのお湯の着地点が大きくズレるので、2〜3分の間確実にコーヒーポットの注ぎ口の真下にお湯を注ぎ続けられる人じゃないと、高い位置からの安定したドリップは不可能でしょう。

味については、低い位置からお湯を注いだコーヒーのほうがクリアで美味しく感じられました。理由として考えられるのは、高い位置からお湯を注ぐとドリッパー内のコーヒー豆の層が荒らされてしまうから、といったところでしょうか。それぞれドリップした後の写真を見比べるとわかるのですが、1cmのところからお湯を注いだものは出がらしの中心に大きな粒のコーヒー粉はありませんが、他2つの写真では中心に大きな粒が集まっているのが分かります。もしかすると偶然なのかもしれませんが、偶然じゃなかった場合、お湯を注ぐ高さがこの違いを生んだのだと考えるべきでしょう。

なぜこうなるのかは分かりませんが、高いところからお湯を注ぐことでお湯が落ちたポイントが凹んで、そこに脇から土砂崩れのようにコーヒー粉が転がり込んでくるのかもしれません。粒が小さいコーヒー粉と大きいコーヒー粉では、水分を含んだとき大きいほうが上に浮かびやすいはずです。なので、お湯を注がれた粒の小さいコーヒー粉は下に押し込まれ、大きい粉は上に残る・・・とか。

原理については想像の域を出ませんが、前述の通りドリッパー内のコーヒー粉が荒らされることで味の違いを生んだのだと思います。そう考えると、コーヒーのハンドドリップにおいて、なるべくコーヒー粉は最初の位置から動かない方にしたほうが良いということなのでしょうか。私のイメージ的には、コーヒー粉が循環するほうがお湯を当てたときの抽出具合が一辺倒にならないので、よりたくさんのコーヒー成分が抽出されてむしろ効率が良いように感じます。その観点で言うと、コーヒー粉を動かさないでドリップするのは、単純にコーヒーの成分を最大限抽出できていないと言えるのかもしれません。

どちらが正しいとかは言えませんが、行き着くところは結局、好みの問題なのかもしれません。ドリッパー内でコーヒー粉をかき回してコーヒー成分が効率よく抽出されるようにしてパンチの強いコーヒーを目指すか、なるべくコーヒー粉を動かさないようにして、スッキリとした上品なコーヒーを目指すか。コーヒー成分が最大限抽出されるのが良いとは限りませんし、抽出し切れていないのが良いかというとなんだか微妙です。

まあどのみち、お湯を高いところから注ぐメリットはありません。腕が疲れますしね。ドリップ中にコーヒー粉をかき回したければ、スプーンなどを使ってかき回しながらドリップすればいんじゃないかなと思います。

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