コーヒーは2杯以上の量を一度に淹れたほうが美味しい?

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  •  コーヒーの抽出
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コーヒーは2杯以上の量を一度に淹れたほうが美味しい?

いつの日だったか、コーヒー豆の販売店の店員さんに「コーヒーは一度に2杯以上の量を淹れたほうが美味しい」と言われた事があります。ずっと覚えてはいましたがちゃんと試したことは無かったので、今回はそれについて検証してみたいと思います。

はじめに

その店員さんの言わんとすることとしては、例えば1人前、16〜20gほどのコーヒー豆で淹れた120cc〜140ccのコーヒーと、2人前36g〜40gのコーヒー豆で240cc〜280ccほど淹れたコーヒー、両方を飲み比べた場合、使用しているお湯の量は当然2人前のほうが多いですが、2人前で淹れたコーヒーのほうが使用しているコーヒー豆の量も多く、お湯がコーヒー粉に触れてからサーバーに落ちていくまでコーヒー粉に触れている時間は長くなりますし、結果的にお湯の量が多くなっても比例する形でコーヒー粉の量が多くなればその分量以上にコーヒーの成分が抽出されて美味しくなる、という事なのかと思います。

と、これはあくまで仮定なので違うかもしれませんし、そもそも2杯以上の量を同時に淹れたほうが美味しいという事自体が無いかもしれません。もっと突っ込むと”美味しい”の定義すら曖昧なので、味わいに差はあるのか、という体で比較検証をしてみたいと思います。

条件

今回の検証は以下の条件下で行いました。

  • 使用したコーヒー豆:エルサルバトル サンカルロス
  • 焙煎度:フルシティローストぐらい
  • コーヒー豆の粗さ(ナイスカットミルのメモリ):4
  • ドリッパー:ハリオ V60透過ドリッパー01(ガラス)
  • コーヒーポット:ユキワ M-5
  • フィルター:ハリオ V60ペーパーフィルター01W(ホワイト)
  • 秤:ハリオ ドリップスケール
  • 豆の使用量:20g・36g
  • お湯の温度:約88℃
  • 蒸らし時間:20秒
  • 抽出量:130cc・260cc

コーヒー豆と抽出するコーヒーの分量について

今回はいつもどおりの20gのコーヒー豆で130ccのコーヒーを淹れるパターンと、36gのコーヒー豆を使用して倍量の260cc淹れるパターンのコーヒーを飲み比べます。コーヒーの抽出量は単純に2倍であるのに対してコーヒー豆の使用量は2倍としていないのは、一般的にコーヒーの抽出量が倍になってもコーヒー豆の分量は倍にはしないようで、今回はとりあえずそれに乗っかる形にしたためです。正直、単純な倍量の40gでやるべきかと迷ったのですが、一般的な認識に合わせたほうがこの検証に至ったコーヒー豆屋さんの店員さんの意図に近づくと思ったため、きっちり倍量にはしませんでした。

ということで、20gのコーヒー豆で130ccのコーヒー、36gのコーヒー豆で260ccのコーヒーを淹れていくことにします。

コーヒーを淹れる

分量が決まったので、コーヒーを淹れていきたいと思います。たっぷりのお湯を沸かして、沸いたら火を止めて温度を下げて、コーヒーポットにお湯を移してコーヒー豆にお湯を注いで蒸らし始めます。はじめは20gのコーヒー豆で、130ccのコーヒーから。蒸らしは早めの点滴に近いぐらいの速度で、最初の1適がサーバーに落ちたらそこから20秒。待ったらお湯を細く注いで、蒸らしから2分10秒程度で抽出完了です。

すかさずもう一杯、36gのコーヒー豆を使用して260ccのコーヒーを淹れます。こちらは、1杯目にお湯の温度、蒸らし時間、抽出時間を合わせる形でコーヒーを淹れます。この量のコーヒー豆を一度に使用してコーヒーを淹れるのは初めてなので、初めは少々お湯を細く注ぎすぎたりしましたが、何とか同じ時間で、倍の量のコーヒーを抽出することが出来ました。

コーヒーを淹れた後のV60ドリッパー

36gのコーヒー豆となると、ハリオの一番小さいV60ドリッパーでギリギリ。でもここまでコーヒー粉が詰まっているとなんだか気持ちが良いですね。実際、お湯を注いでいる間もモコモコしていて気持ちが良かったです。

全部きっちりカップに注いだら、飲み比べをしましょう。

コーヒーを飲み比べる

まずは20gのコーヒー豆で130cc淹れたコーヒー。味わいは苦く、酸味はなし。ミルクを入れていないのにカフェオレのようなクリーミーな味わい。しっかり苦いけどキツくない、かなり美味しいです。

・・・初めて飲むようなコメントを書いていますが、実際は何度も飲んでいる銘柄。どれが美味しいかとかちゃんと覚えていないので、そろそろ覚えようと少し反省。

次に36gのコーヒー豆で260cc淹れたコーヒー。飲むと、口に含んだ印象は一緒。しかしまったり感は薄く、全体的な味の濃さとかはほとんど変わらないように感じるのですが、口当たりのまったり感に欠けています。1杯分淹れたコーヒーと飲み比べなければ分からない程度のものですが、差は感じられます。

今回の結果

今回の結果をまとめると、以下のようになります。

  • コーヒーは1杯分だけ淹れても美味しく淹れられる
  • コーヒーは2杯分以上の量で淹れても、それによって美味しく淹れられるということはない

考察・感想

色々まだ考慮するべき点や改善点があるとは思うですが、結論としては、2杯分以上の量でコーヒーを淹れても、1杯分だけ淹れたコーヒーより美味しく淹れられるということはないと言って良いかと思います。まず、味の濃さ的な部分については、20gのコーヒー豆で130cc淹れたコーヒーのほうが濃く感じました。味が濃く感じた、というよりはドロっとしていたというか、粘度が高く感じたというのでしょうか。とりあえずこちらのほうが濃かったのは間違いありません。コレの原因について考えられるのは2つあり、単純にコーヒー豆の使用量が足りなかったか、抽出時間が早すぎたという事です。

コーヒー豆の使用量については、記事内で書いたように一般的にコーヒーを淹れる量が倍になってもコーヒー豆の使用量は倍にはしない、という基本に則って決定しました。36gという量はまあ、適当なのですが、それでも一般的なコーヒーを淹れる量とコーヒー豆の分量の推移を考えると、2杯分でも濃いくらいのコーヒー豆の量を設定したつもりです。それでもって、一般的にそのようにするのであれば、それはコーヒーを淹れる量が増えても、コーヒー豆の量は単純に倍にしなくともコーヒーの濃度は維持されるという前提があるからそうしている可能性が高いでしょう。つまり今回の場合、コーヒー豆の使用量が少なすぎたせいでコーヒーの味わいに影響が出た可能性は低いと考えています。

そうすると、味わいに影響を与えたのは抽出時間だと考えています。今回の場合、1杯目の130ccのコーヒーが蒸らし含めて2分10秒程度で淹れ終えたため、なるべく条件を揃えるために2杯目の260ccのコーヒーも2分10秒ほどで淹れ終わるように調整を行いました。1杯目のコーヒーを淹れたとき、細く静かにお湯を注いでコーヒーを抽出してその程度の時間がかかったため、その倍の量のコーヒーを淹れるためには単純に2倍の速度でお湯を注がなければなりません。今回使用したのはハリオのV60ドリッパーですが、これは大きな一つ穴が特徴で、お湯をゆっくりそそげばゆっくりと、勢いよく注げば勢い良くコーヒーが抽出される、つまりお湯を注ぐ速度がダイレクトに伝わるため、抽出時間を合わせるために勢い良く注いだ分お湯が早くコーヒー粉の内部を通過してしまい、20gのコーヒー豆でコーヒーを淹れる場合よりも多くコーヒーに触れていても、結果的に薄めのコーヒーになってしまったと考えています。

それが仮に正しい場合、考えなければいけないのは適切な抽出時間についてです。基本的にコーヒーの抽出は5分も10分もかけるものではないと私は考えていて、実際、これもいうなれば一般的にですが、淹れるコーヒーの量に関わらず3分程度という話を聞いたことがあります。長くなることのデメリットについてはわからないので今回は置いておきますが、それに従わず常に同じ速度でお湯を注ぐようにした場合、必要なコーヒーの量が増えれば必然的にコーヒーを淹れる時間は長くなります。今回の場合、20gのコーヒー豆で130ccのコーヒーを淹れるのと同じ速度で36gのコーヒー豆で260ccのコーヒーを同じように淹れていたら、抽出時間は5分ほどになっていたでしょう。2分は早すぎたとしても、味わいを考慮すると5分かけてコーヒーを淹れていたらそれはそれで別のコーヒーが出来ていたのではないか、と考えています。

そうなると、今回の正解は、260ccのコーヒーを淹れるとき、130ccのコーヒーよりも倍速まではいかずとも勢いのある速度でお湯を注いで、同じ抽出時間でなくても3分以内とすれば良かったのでは無いかと思います。ただ、この手段でいくとすぐに限界になり、例えば60gのコーヒー豆で450ccのコーヒーを3分以内で淹れるとする場合、恐らく3分以内にコーヒーを淹れ終わるにはそれなりに勢いをつけてお湯を注ぐ必要があるでしょう。そうすると今回のように1杯分よりも薄いコーヒーが出来上がってしまいます。つまりは失敗です。

あれ、ここまで書いていてふと思ったのですが、そうなると結局2杯以上の量のコーヒーを一度に淹れるよりも、やっぱり1杯分の量のコーヒーを丁寧に淹れたほうが美味しくなるのでは?という結論で良い気がしてきました。某名店だって、一度に1杯ずつ丁寧にコーヒーを淹れますしね。いや、これはお店の注文がお客によって異なるからかな・・・。とりあえず、タイトルにも取り上げたコーヒーは2杯以上の量を一度に淹れたほうが美味しい?という疑問については”No”であるで良いかなと思います。あくまで考察が正しいとした場合、ですが。

さいごに

これで2杯以上の量を淹れたほうが美味しい!という結論になったら、それはそれで発見があったということで嬉しいのですが、これからは2杯分淹れなきゃならないかな、なんて思っていたので、ホッとしたような、残念なような微妙な気持ちです。ですが、今回の検証を通してまた検証するべき項目という名のネタが増えたので良しとしましょう。

1 件のコメント
    • 通りすがりの珈琲屋
    • (2019-01-16 14:53)

    えっと、私は2杯淹れた方が美味しく淹れ易いと考えています。
    こちらの持論は、条件が揃っていないのが気になります。
    抽出に掛かる時間は同じにすべきでしょう。化学実験の基本は条件を揃えることです。
    注ぐお湯の量が増えて抽出が薄くなるのは、抽出技術の乏しさです。

    この理論だと、「多人数分を一度に美味しく淹れることは出来ない」となります。
    時間が掛かり過ぎると良くない理由が分からない、とか
    プロ(毎日淹れている人)の意見を一度の実験で否定したりとか、
    知識と経験の無さを感じます。もっと精進して下さい。

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