一度に淹れるコーヒーの量が多いときのお湯の注ぎ方は? その1
- コーヒーの抽出
- コーヒーとお湯の量
コーヒーをプアオーバーで淹れる場合、1杯分であれば丁寧に淹れても2分少々で淹れることが可能です。しかし、2杯、3杯分と一度に淹れる量が増える場合、丁寧に淹れていると全ての量を淹れ終えるまで非常に時間がかかってしまします。
はじめに
コーヒーを2杯以上同時に淹れたほうが美味しく淹れられるかという検証の際にも書きましたが、コーヒーを淹れる場合、淹れるコーヒーの量に関わらず3分程度が良いという話を聞いたことがあります。しかし、前述したように1杯分のコーヒーであれば丁寧に細くお湯を注いでも3分あれば十分淹れることが出来ますが、それ以上に量が増えると同じ丁寧さでは3分以内にコーヒーを淹れ終えることが出来ません。
そうなると細く丁寧に注いでいたお湯を太く注ぐようにするか、3分という時間の縛りを無視するか、どちらかを選ぶ必要があります。私の場合は時間を守って、淹れるコーヒーの量が増えた分だけお湯を太く注いで3分以内にコーヒーを淹れ終えることが出来るようにしていましたが、時間ではなく淹れる丁寧さ、つまりお湯を注ぐ太さを維持して3分以内に淹れるというルールを無視するということは試していなかったので、試してみることにします。
今回は、3分という時間ルールを守る場合と、時間を無視して注ぐお湯の太さを維持する場合のパターンで淹れたコーヒーを飲み比べて、味の比較を行ってみたいと思います。
条件
今回の検証は以下の条件下で行いました。
- 使用したコーヒー豆:キリマンジャロ
- 焙煎度:フルシティローストぐらい(自家焙煎)
- コーヒー豆の粗さ(ナイスカットミルのメモリ):4
- ドリッパー:ハリオ V60透過ドリッパー01(ガラス)
- コーヒーポット:ユキワ M-5
- フィルター:ハリオ V60ペーパーフィルター01W(ホワイト)
- 秤:ハリオ ドリップスケール
- 豆の使用量:36g
- お湯の温度:約87℃
- 蒸らし時間:30秒
- 抽出量:260cc
2パターンのコーヒーを淹れる
準備をして、コーヒーを淹れます。使用するコーヒー豆は、1kg1200円程度で購入した生豆のキリマンジャロを、手網で焙煎したもの。キリマンジャロは酸味の特徴的なコーヒーというイメージなので、あえて浅煎りではなくフルシティロースト程度まで焙煎していた物です。・・・前述のように安物のコーヒー豆でしかも自家焙煎モノなので、可能であればもっと他のコーヒー豆を使用したかったのですが、今回はコーヒー豆の使用量が多く、それなりの量を用意できるコーヒー豆が他に無かったので、このチョイスになりました。
コーヒー2杯分、260ccをコーヒー豆36gを使用して淹れます。お湯の温度は、今回は87℃。蒸らし用のお湯を注いで、コーヒーが滴下してから30秒蒸らして、そこからお湯を注いでいきます。初めは3分以内という時間を守ってコーヒーを淹れます。130ccを淹れるのにおおよそ2分少々かかるので、それを考慮していつもよりお湯を太めに注いでいきます。時間を見つつ、お湯の速度を微調整して、ほとんどぴったり3分で260ccのコーヒーを淹れ終わりました。
3分以内に淹れたコーヒーの跡。中心に溜まるはアク。
次に、時間を定めずに1杯分のコーヒーを淹れるときと変わらず細くお湯を注いでコーヒーを淹れるパターン。こちらも30秒蒸らしたら、細くお湯を注いでいきます。お湯を注ぎ始める前の予想としては、5分くらいかかって手も疲れそうだな、と思ったのですが、お湯を注ぎながら時間と量を見ていると、意外とそれほどかからなそう。ペースを保って260ccのコーヒーを淹れた時点で、時間は4分12秒でした。
時間を気にせず、細くお湯を注ぎ続けたコーヒー。ゆっくり注いだ分、中心の凹みは少なめです。
淹れ終えたので、飲み比べます。
2パターンのコーヒーを飲み比べる
コーヒーを淹れて着席。飲みます。まずは3分以内に淹れたコーヒーから。味は、しっかり苦い。酸味は感じられず、甘みは結構ある。ボディも強め。最近、スペシャルティコーヒーの比率が高く、浅煎りで酸味の強いコーヒーばかりを飲んでいたので、なんかホッとしました。ただ、今回使用したのは良いコーヒー豆ではないので没個性的ではあります。
次に、時間に縛られず丁寧に淹れたコーヒー。飲むと、ぬるくない。時間をかけたので少々ぬるくなったかと思ったのですが、温かいです。味の感想としては、3分以内に淹れたコーヒーより苦味が控えめに感じます。交互に飲み比べてみると、苦味が弱いと言うより、全体的に3分以内に淹れたコーヒーよりもパンチ弱め、落ち着いている印象です。いや、どちらかと言うとこちらのパンチが弱いと言うより、あちらが強いと言ったほうが正しいでしょうか。
今回の結果
今回の結果をまとめると、以下のようになります。
- コーヒーは量に関係なく、丁寧にお湯を注いで淹れた方が良い可能性がある
考察・感想
思ったよりはハッキリとした違いを感じることが出来ませんでした。深煎り目のコーヒー豆を使用したのは失敗だったかもしれません。
事前の予想としては、時間に関係なくコーヒーを淹れた場合、苦味が強くなり、ぬるくなり、雑味等が多く抽出されたコーヒーになるのではないかと予想していました。ですが、実際にコーヒーを淹れてみると、3分以内に淹れたコーヒーよりも落ち着いた味わいで、ぬるくもなく、なんら問題の無いコーヒーを淹れることが出来ました。
苦味が強くなると予想したのは、抽出時間が長くなるほどコーヒーがその分蒸らされている状態になっているということなので、その時間が長くなるほど苦味が溶け出しやすくなっていると思ったからです。しかし、実際にはそうならず、むしろ3分以内に淹れたコーヒーの方が苦味を強く感じるくらいでした。この結果から考えられるのは、お湯の温度の問題です。当たり前ですが、コーヒーを淹れる時間が長くなれば、その間にコーヒーポットの中のお湯の温度は少しずつ下がっていきます。3分以内にコーヒーを淹れる場合とそれ以上の時間をかけてコーヒーを淹れる場合、抽出時間が短いほどお湯の温度が高い状態でコーヒー粉にお湯を注ぐことが出来る量が多いので、それだけお湯の量あたりの苦味の抽出量は多くなると考えられます。今回の場合は、言うなれば3分以内にコーヒーを淹れるパターンは、「お湯の温度が高く、コーヒー粉が蒸らされている時間が短い」パターンで、時間に関係なく丁寧にコーヒーを淹れるパターンは、「お湯の温度が低く、コーヒー粉が蒸らされている時間が長い」パターンと表現出来るので、両者を比較した場合、蒸らし時間の長さよりもお湯の温度の高さのほうがコーヒーの苦味、もしくは全体的なパンチに与える影響が大きいと言えるかもしれません。
2つめの予想のぬるくなる、という点については、3分以内という時間を無視して普通にコーヒーを入れるため、時間がかかる分冷めてしまうと思ったためです。しかし、実際には温かいコーヒーを淹れる事ができました。これは、まあ、事前予想でもう少しコーヒーを淹れるのに時間がかかると考えていたので、その誤差と言って良いでしょう。取るに足らない部分ではありますが、糧にするならばいつもより1分程度コーヒーを淹れるのに時間がかかっても、ぬるくはならないということが分かった、としておきます。
最後に雑味が多く出るのではないか、という予想ですが、これは本当に予想で、イメージ的にコーヒーを淹れるのに時間がかかると不必要な成分、雑味が徐々に出てきてしまうと考えたためです。これは、以前に行ったお湯の温度の検証の結果で、高温のお湯を使用して淹れたコーヒーは雑味が多く抽出されていて、今回はお湯の温度自体は事前に調整していたためお湯の温度という点に関して懸念はありませんが、蒸らし時間が長くなる分結果的に同じような、雑味が出る可能性があるのではないか、と予想しました。高温のお湯で一気に雑味が出てくるか、高温ではありませんがそれなりの温度を長時間維持することで、ジワジワと雑味が出るか、と表現すればわかりやすいでしょうか。結果的にはそれも杞憂に終わりましたが、この結果から分かることは、雑味は一定以上の高温でしか抽出されず、時間は関係が無い可能性があるという事です。書いておいてなんですが、ちょっと信憑性に欠けるので深く考察するのはやめておきますが、10分も20分もかけてコーヒーを淹れたりする場合は、また結果が異なる事はあるでしょう。
肝心な飲み比べの結果ですが、3分以内という時間を守って淹れたコーヒーは、時間に関係なく丁寧に入れたコーヒーと比較してパンチが強い印象がありました。これについては、苦味の予想の部分で書きましたが、お湯の温度が起因しているのかと考えています。単純に、お湯の温度が高いときにコーヒー粉と多く接触するほど、あらゆる要素がお湯の低い状態と比べて多めに抽出される、という事です。これも面白いのが、3分以内でコーヒーを淹れる、つまり「早く注ぐぶん、お湯の温度が高い」パターンと、時間にかかわらず丁寧にコーヒーを淹れる、つまり「丁寧に注ぐぶん、お湯の温度が低い」パターンでは、前者の方が濃く成分が抽出されるということになるので、雑味の考察も考慮すると、やはりコーヒーの成分の抽出に一番に絡んでくるのはお湯の温度というのが濃厚になります。
まあ、あくまで私個人の主観が強いのでこれが真実かどうかはまだまだ分かりません。次は、酸味の強めのコーヒーで試してみて、同じような結果が得られるか、それ次第だと思います。
さいごに
1回で終わる検証かと思っていましたが、イマイチきっちり結論に達することができなかったり、考察を書いていたら楽しくなってきてしまったので、一通り書き終えたあと、タイトルに「1回目」と書き加えておきました。ちょっとした疑問からかなり想像をふくらませる事ができましたが・・・・。面白い結果にたどり着ければありがたいです。