コーヒー抽出の蒸らし時にコーヒーの粉を混ぜてみる その2
- 蒸らし
- 蒸らし時にコーヒー粉を混ぜる
すぐに確かめてみたい事がなかったので、過去の検証を掘り起こして再検証してみます。
はじめに
自分が以前行った検証をズラッと眺めてみて、蒸らしのときにコーヒーを混ぜるという検証が目に止まりました。お湯の温度の検証で、これまで美味しいコーヒーを突き詰めるのを怠けていたことを少々反省したので、コーヒーの味にそれなりに影響を及ぼしそうな事柄でかつ1回で終わらせるのにはもったいないなあと思ったこの検証について、今回は再度取り組んでみたいと思います。
条件
今回の検証は以下の条件下で行いました。
- 使用したコーヒー豆:エチオピア モカ グジ G-1 ナチュラル
- 焙煎度:シティローストぐらい
- コーヒー豆の粗さ(ナイスカットミルのメモリ):4
- ドリッパー:ハリオ V60透過ドリッパー02(陶器)
- コーヒーポット:ユキワ M-5
- フィルター:ハリオ V60ペーパーフィルター01W(ホワイト)
- 秤:ハリオ ドリップスケール
- 豆の使用量:20g
- お湯の温度:約88℃
- 蒸らし時間:50秒
- 抽出量:130cc
前回の結果などについて
蒸らしのときにコーヒーを混ぜる、というテーマの検証の1回目の内容を見てみると、まず我ながらアホだなと思いました。というのも、蒸らしのときに混ぜる、と銘打っておいて抽出のときに混ぜているという意味不明な感じ。それ蒸らしのときじゃないよね?っていう。正直、今見るとかなり恥ずかしいです。
それはさておき結果を見てみると、あんまり味に変化はないという具合に。これについてはまあ仕方ありませんが、そもそも題名とやってることが違うので(2回目)、もう一度、今度はちゃんと題名通りの検証を行います。実質今回が1回目と言っても良いかもしれません。
コーヒーを淹れる
目的を見誤らないように再確認出来たところで作業開始です。今回は、20gのコーヒー豆を中挽きで挽いて、お湯の温度の検証の結果を踏まえ90℃を切ったくらいの温度のお湯を注いで、蒸らしのときに混ぜるコーヒーと混ぜないコーヒーをそれぞれ淹れて飲み比べを行います。
肝心な蒸らしですが、今回は20gのコーヒー豆に対して10〜12cc程度のお湯を満遍なく注いで蒸らしを行います。蒸らし時間はお湯が注ぎ終わってから50秒。混ぜない場合は、何もせず時間通りに蒸らしたらすぐにお湯を注いで130ccのコーヒーを抽出します。
混ぜずに蒸らしてコーヒーを淹れた後のドリッパー。混ぜていないので土手もキレイです。
対して、蒸らしのとき混ぜる場合は、同量のお湯を注いだらスプーンですかさず上から下までかき混ぜます。この時気づいたのが、下の方は全然湿っていないという事。20gのコーヒー豆に対して10cc強のお湯では少し足りなかったかもしれません。しかし、だからこそ混ぜるという事が力を発揮します。しっかり混ぜて、全体が湿った感じになったら少し均して、時間が経ったらお湯を注ぎます。
混ぜたこともあり、ちょっとぐちょぐちょ。でも、アクはちゃんと残ります。
コーヒーを飲む
2杯淹れ終えたら飲み比べです。まずは普通に淹れた方から。飲むと、しっかりした苦味とクリーミーな口当たり。エチオピアのモカというともっと香り豊かで酸味のある感じを考えていましたが、思ったより苦く、モカらしくない感じがしました。焙煎具合の問題が大きいのでしょうか。
次に、蒸らしのときにかき混ぜてから淹れたコーヒー。味はこちらも苦く、かき混ぜていない方とあんまり変わらない、というのが第一印象。何度か飲み比べて、かき混ぜたほうが酸味が気持ち強く、かつ軽い口当たりになった気がします。
今回の結果
今回の結果をまとめると、以下のようになります。
- 蒸らしのときにコーヒーをかき混ぜると、軽い味わいになる
考察・感想
今回は1回目と違って題名通りの検証を行えたので、少しばかりですが満足しました。ただ、結果としては1回目のときと変わらないのかな、とは思います。
まず、味の比較についてですが、あまり良い捉え方は出来ないと考えています。というのも、かき混ぜた方は気持ち「酸味強め、味軽め」としましたが、これはつまり薄く抽出されただけなのではないかという事です。根拠・予想ですが、かき混ぜたことによって比較的隙間なくドリッパー内に収まっていたコーヒー粉同士の間に余計な空間ができて、その結果お湯を注いだときにコーヒー粉に触れる割合が減ってしまい、薄く抽出されたという事です。これは正直なところお湯を注いでいる時点で感じていたことで、かき混ぜていない状態のものはお湯を注ぐと染み渡っていく感じですが、かき混ぜた方は流れていく感じでお湯を注いでからの滴下までも早いように感じていました。これが正しいならば、かき混ぜていないものよりもコーヒー粉に触れていない事で苦味は弱まり、かつ軽めになるのも頷けます。
そうなると、かき混ぜることのメリットは何でしょうか。そもそもこの検証の1回目を行った理由として、(何故そうするかは忘れましたが)一部のコーヒーショップなどでは蒸らしのときにかき混ぜるということをしている、という情報を雑誌で読んだためです。つまり、それなりにかき混ぜることにメリットが存在するはずです。
考えられるのが、効率良く蒸らす事ができるという事です。蒸らしのとき、余分にお湯を注いでしまうとそれだけ蒸らされていないコーヒーが抽出されてしまいます。蒸らしていないコーヒーの味がイマイチになることは、蒸らしによる味の比較で確認済みなので、つまりはその分イマイチなコーヒーが抽出されているという事になります。それを防ぐためには、なるべくコーヒーが抽出されないように全体を満遍なく蒸らす必要がありますが、それもなかなか難しいと思います。ですが、絶対に滴下することがない量のお湯を注いで混ぜれば、少ないお湯の量で全体を満遍なく湿らせて蒸らす事が可能です。これは、蒸らす事が難しいドリッパーの端の部分も蒸らす事も可能となり、そう考えると非常に良い方法かと思います。
これらのことから、蒸らしの観点のみで見ればかき混ぜるのは非常に効率的なように見えます。しかし、その後の抽出のときはコーヒー粉をかき混ぜた分”ガバガバ”で味は軽くなってしまうので、総合的に見るとどっこいどっこいといった様に感じます。ただ、ここに更に別の要素を組み合わせて考えてみると、こちらの方が良いように感じられてきます。それは、サードウェーブコーヒーの概念です。コーヒー本来の風味や味わいが楽しめる浅煎りが良しとされるサードウェーブの観点では、濃く抽出されることが全てではありません。浅煎りで入れたコーヒーは軽くなりますし、サードウェーブに乗っかったコーヒーショップやそれを好む消費者にとっては、少々味わいが軽くなったところで味の本質が変質してしまうことがなければ、それは受け入れられる事なのではないか、という事です。その観点で言うと、蒸らしの際に確実に全体を無駄なく蒸らすことが可能な”かき混ぜる蒸らし”は非常に良い手法なのかもしれません。
最後に念のため書いておきますが、蒸らしのときにかき混ぜたものとそうでないものを比較したときにかき混ぜた方は薄いとしていますが、極端にそうではなく、味わいの本質的な部分はほとんど一緒である、という事は念押ししておきたいと思います。
さいごに
味は濃い方が良い、という場合以外は、蒸らしのときに余計なコーヒーの抽出が起こらないかき混ぜる方法のほうが良いような気がしてきました。現時点で甲乙つけるのは難しいので、これについてはもう少しパターンを変えて見て見る必要があるかもしれません。